妹は天才で最強だが兄である俺が妹を守らない理由にはならない

ナカヤミ

プロローグ

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「正解だよアリス、また記録伸びたな」


 妹はとてつもなく賢い。フラッシュ暗算といって何十、何百桁もの数が画面に瞬間に表れる。その数全てを足しているのだ。


「アリスならこれくらい楽勝です!」


「今日はここまでにして、誕生日会の準備しよっか


「ケーキたのしみっ!」


ここはとある日本の研究所の一室。この俺、神谷スグルは唯一の家族であり妹の神谷アリスの世話をしている。


「ケーキを持ってくるから少し待ってて」


 妹のアリスは特殊な人間だ。簡潔に言えば天才である。本来、人間の脳は10~15%ほどしか使われていない。しかしアリスは自分の脳を100%使うことができる。思考、情報処理能力、記憶力が異次元であった。


「アリス、今日は14歳の誕生日おめでとう」


 俺はテーブルに二切れのショートケーキを用意した。


「お兄ちゃんありがと、14歳になっちゃった」



「もう少しで外に出れそうだね、アリスと早くお散歩したいな」


この世界でアリスは自力で歩くことさえできない。脳を100%使えるデメリットは体が全くそれに対応できないことだ。ましてや延命装置がなければ生きていけない。








──ドンっ と扉を強くけるような音がした



 誰だ、この研究室には俺たち二人しかいないはず・・・


「神谷アリスを国家指定危険人物としてこの場所で処刑する」


上下武装した特殊部隊のような人たちがアリスとスグルのいる部屋に乗り込んできた


「どうしてここが・・・」


ここは、政府にも内密であった私的な研究施設。いやそんなことより―


「絶対殺させねぇよ。何人いようがかかってこい」


 とは言ったものの、武装した人間が10人相手では少し厳しい


「待って、兄は関係ありません。見逃していただけないですか」


アリスが一生懸命体を起こし、兄スグルの身の安全の交渉に乗り出した


「おいっ!アリスを見捨てるわけないだろ」


とは言っても俺では複数銃を向けられてはどうすることもできない。どうしたらいいんだ。


「兄に手を出すなら、国家秘密情報機関を破壊します」


アリスの脳は常にネットワークとリンクしている。以前は外国からのサイバー攻撃に対抗するべくこの国のために戦った。しかし、今や祖国の敵となっている


「では取り引きということでいいかね」


「勝手に話し進めんなよ、俺は反対だ」


 妹のアリスが生まれてから俺は劣等生のレッテルを張られ続けた。科学者である親は、アリスを素晴らしい実験対象としてしか見ておらず、俺は存在すら忘れられていた。それでもアリスだけは俺を家族と呼んでくれた。俺をお兄ちゃんと呼んでくれた。不出来な兄だけど、でも妹のアリスだけは救うって決めてんだ。


「お兄ちゃん、アリスの分まで幸せになってね」


「ふざけんな、俺は、おr・・・」


急に意識が、なんだこれ、目の前が暗くなって―


「契約だよ」


知らない女性の声がした。そして前からバタバタと倒れる音と濃い血の匂いがする。でも、もう意識が・・・


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