『引きこもりも歩けば自分にあたる』

「犬も歩けば棒に当たる」昔の賢人さかびとかく語りき。

 しかし、俺はえてこう言おう、

」と。


                    ◆


 今回は―むしゃくしゃしていた。

 なんとはなしに再就職さいしゅうしょく活動らしきものを始めたのだが。

 全く上手く行かず。泣かず飛ばずでよる眠れない…

 と。こうくれば散歩であり。


                   ◆


 夜のとばりが落ちた公園。

 心地よい闇が俺を優しくでる。

 そこには星の代わりに街路灯がいろとう

 小さくきらめくその明りはベンチを照らし出し。

 ベンチには人影があり。そいつは顔を俺に向ける。


 


 コイツは―「俺かよ」

だよ」

「ぶっさいくなツラさらしやがって」なじる俺。

「てめえのほうが不細工だっつの」詰られる俺。

「…で?この深夜の散歩にどんな『イベント出来事』を加えようっうてんだ?」

「別に。なんとなく居たらお前がきてな。見たくもなかったぜ」彼はそう言う。心底嫌そうに。

「俺だって、くさくさしてたところだ…」言ったところで無駄とも思え。


「…お前は―俺か?」かの男は問いかけて。

「…お前は俺かよ」俺は確認を取る。こんな出来事―あったっけ?記憶が怪しい。

「お前スマホ持ってるか?」かの男は問う。

。お互い確認しようや」やりたいことはわかった。


 こうして。ベンチに座るかの男に向かってスマホをかざし。

 俺はかの男がかざすスマホを見て。


「俺が―完全に病む手前だな」ギリ会社に行ってた頃の事だ。限界げんかい迎えそうで記憶があやふやになってた?

「1年後…か。お前何してんだよ?」かの男はすがるように聞き。

「病院行って、薬もらって、飲んで、療養。それが1年」教えてやる。

「情けねえ」

「俺もそう思うよ。だがな?」

「なんだ?」



「んだと?」おお。まだ怒る元気があるかい。

「今のお前は―有りていに言って病気だ」

「…分からん」

「あのな。毎晩まいばん心臓の高鳴りで2時間おきに目が覚めるってのは異常だぜ?」

「…でも」

「休め。お前が居なくたって…大賀おおが居るから何とかなるぜ」スマン。大賀。

「アイツ…なら出来るか」

「そそ。少しは自分の体に目を向けろ」

「んな事してよお。瑠璃るりはどうなる…?」

「別れたよ」悪いな。過去の俺。

「どうすんのよ…それ」

「それでも。…楽な事ではないが―

「…未来人が言うなら納得するしかねえ」更にしおれだす俺。

「なあ。俺。もっと?」手向たむける言葉はこれしかなく。

「見てるはずだが」

「見えてないんだな、これが」未来人たる俺は優位だなあ。

「そうかよ…」


 こうして。

 俺は過去の俺に出会い。

 

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