第29話 工藤真理愛と友坂絵里は決着をつけたい


 私、友坂絵里。工藤さんと学食から教室に戻った後も散々言い合ってしまった。クラスメイトは帰りもせずに私達の言い争いを聞いていた。


 ここまで来たら、悠にはっきりして貰った方が良い。だから悠に直接聞く事にした。悠のマンションに向っている途中だけど、私の隣には何故か工藤さんも一緒にいる。面白くないが仕方ない。悠から彼女に引導を渡してもうしかない。


 私は悠と中学からの友達として彼と接しているけど、一度として邪険に扱われた事無いし、いつも私に優しい。私を守ってくれる。


 私の気持ちを正直に言えば、分かってくれるはず。悠が工藤さんと体の関係を持ったからって言ってもそれだけの事。絶対に悠は私を選んでくれる。




 私、工藤真理愛。今坂口君、ううん悠の家に向っている。もう彼とは正式に付き合う事をお互いに確かめている。何回も体を重ねた。彼はいつも優しくしてくれた。


 隣にいる友坂さんはそこまで行っていないのは悠の彼女への接し方で良く分かる。だから彼女が何と言おうと私の勝ちよ友坂さん。


 それを彼女の前で悠にはっきり言って貰えばそれでいい。私が負けるはずがない。だって彼は私を愛してくれるって言って…えっ?!付き合うとは言ったけど…。いえ大丈夫よ。あれをしている時に言ってくれているはず。間違いないわ。




 俺はマンションに戻った後、武道場に行こうと支度をした。午後は一時から始まるが、三時に行っても一時間半は出来る。今日は少しでも稽古をしたい気分だ。明日からは、昼をあの二人に付き合わずに食べる事にするか。五月蠅くてしょうがない。


 支度が終わり、部屋を出ようとして


ピンポーン。


 誰だ、人が出かけようとする時に。入口カメラを除くと、げっ!なんであの二人が来ているんだよ。居留守を使うか。


ピンポーン。ピンポン、ピンポン、ピンポン

「いるんでしょ悠。開けて!」


 くそっ、これじゃあ、入口で他の住人に迷惑だ。仕方なくマンションの入口のドアを開けると、二人はエレベータに乗ってあっという間に俺の部屋の前に来た。


ピンポーン。


 ここまで来たら仕方ない。ドアを開けると


「「悠!」」

「えっ、なんで工藤さんまで名前呼びなのよ」

「そういう事よ」

「おい、玄関で騒がないでくれ。絵里も真理愛も早く入れ」

「真理愛って!」

 また。絵里が驚いている。



 二人をリビングのソファに座らせてから暖いミルクティを作ってローテーブルに置くと


「二人で何の用事だ。俺は稽古に行きたいんだ」


 しーん。


 二人共話さない。


「二人共話さないなら帰ってくれ」

「悠」

 真理愛が口を開いた。


「悠、あなたの口からはっきり言って。私達は付き合っている。愛し合っている。だから私達の間に友坂さんが居る余地は無いって」

「悠、工藤さんの言っている事嘘よね。私は悠の大切な友達。そして高校を出たら婚約して、いずれは一緒になるのよね。悠、私達心は通じているよね」


 全く、どうしてこうなっている。真理愛と付き合っているのも本当。絵里を大切な友達と思っている事も本当。だが二人共それ以外はどういう意味だ。


「絵里、俺は真理愛と付き合っている。体の関係もある。それは事実だ。だがお前は俺の大切な友達だ。これからもそのつもりでいる。ただ高校卒業以降の話は知らないし、した事ない。

 真理愛、お前は俺の大切な彼女だ。これからもずっと大切にする。だが、絵里を友達から外す事はしない。

 だから真理愛と付き合っていても俺の側に友達としての絵里の居場所はある。それは真理愛と付き合い始める時言ったはずだ。もう人前で俺の事を名前呼びは構わない」


 長い沈黙の時間が流れた。



「悠、友坂さんが友達だというのは認める。でも私を一番に優先して。私はあなたの彼女よ」

「悠、大切な友達なら彼女より、いいえ彼女である工藤さんと同じ位大切にしてくれるのよね」


 全く分からない。二人は何を望んでいるんだ。俺はどちらかを選ぶなんてつもりは無いし、意味もない。

 だが、真理愛はあれが終わるまでは必要な人間。恋人同士の体は絶対に崩せない。



「絵里、真理愛は俺と付き合っている。だからお前が大切な友達だとしても絵里より真理愛を優先する。ただし、それは約束がブッキングした時だけだ。これについては真理愛も分かってくれ。君は大事な人だが、その為に他の友人を全て投げ出す気はない。

 お昼についてはもう休みに入る。だから交代か俺一人かどちらかにしてくれ。放課後は基本武道場だ。お前達とは会えない」




「分かったわ。工藤さんの事は了解した。でも私も大切にしてくれるならクリスマスは二人きりで一緒にやりたい。いいでしょう」

「えっ、駄目よ。悠は私と一緒にやるの」

「真理愛、絵里、日付を分ければいい」

「じゃあ、私はイブの日。良いわよね私優先で」

「ふん、じゃあ私はクリスマス本番会うわ」

 なんか去年見たいだな。


「分かった。クリスマスは真理愛が二十四日で二十五日が絵里という事でいいな」

「「うん」」



 一応、駅までの道中で二人が言い争いをする事を避ける為、駅まで送って行った。右に絵里、左に真理愛が並んでいる。向こうから来る人が少し迷惑しているように見えるが、我慢して貰う事にするか。



 それから二週間。昼休みは真理愛、絵里の順で交代に昼を食べた。放課後は一人で帰り武道場に稽古に行った。


 クラスの子達は、真理愛と俺がお互いに名前呼びしているのを聞いて始め驚いていた。最初は色々と噂をしていたが、その内消えた。

 ただそれ以来、男子の俺に対する嫉妬や妬みの目が酷くなった。まあ、理由は分からないでもない。絵里は校内一の美少女だ、そして真理愛は校内一の可愛い子だ。しかし全く困ったものだ。


 芳美の事が気になるが、あいつが自分でやると言っている、頑張って欲しいものだ。


 そして終業式を迎え冬休みに入った。



―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

次回以降をお楽しみに。

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