第20話 新クエスト、強引
王子の提案に俺は渋々承諾し、2人はイクシードの酒場へやってきた。
目的はもちろんクエストをクリアする為である。
初めは別にどんなクエストでもいいかと思いアイロニーの時のように壁にかかっている依頼リストを見ると、少しの違和感が気になった。
「難易度……?」
アイロニーの依頼リストはクエストのタイトルと奨励参加人数しか書かれていなかったが、ここにあるものは全てそれに加えて難易度という項目がある。
「…あぁわんはイクシードに来たばかりだから分かんないか!」
王子は依頼リストの1つを手に取った。
「イクシードからはね…この難易度って要素が追加されるの。難易度は1からあってね、どこまであるかはまだ攻略班でもわかってないの」
それを聞き、俺も1枚手に取った。
「"イクシードの守護神(キーパー)"(ダンジョン)…難易度は6……」
「あ〜それはダメ!絶対クリア出来ないから」
「何でだ?なにかそういう決まりでもあるのか?」
「違う違う!さっき難易度あるって言ったでしょ?普通の人が1人でクリア出来る限界が3で上手い人でも4が限界。6なんて2人でも絶対無理だよ!」
王子は俺に1枚の依頼を突き出してきた。
「やるんだったらこれがいいよ!」
「"ゴブリン達との遭遇"…難易度は2……」
「まずはお互いの実力を知らないと!」
それは一理ある。
イクシードのクエストがどんなものか分からないしクエストでモンスターと戦ったことないしね。
「はい!これお願いします!」
ってもう依頼提出してるし!
俺の確認なしかい!
「分かりました!"ゴブリン達との遭遇"ですね!ではお気を付けて行ってらっしゃい!」
そう言った看板娘は、アイロニーのアリサではなくまた違う人物だった。
胸元に『サナ』とある。
「わん行くよ!」
「痛ッ!」
王子に背中を思いっきり叩かれ無理やり引っ張られる。
「…良いよ!もう行くから!」
~~~
森を突き進み、地図に印してあるポイントへやって来た。
辺りは薄暗く少し気味が悪い。
「やるぞ〜」
王子は全身にピンク色の皮の防具を身につけ、木の剣を手に持った。
俺は防具を常にみにつけているが王子は着けていない。
可愛い見た目をできるだけ見たいしこの少しダサい防具を着けて街を歩きたくないからだそうだ。
俺もスライムヘッド外そうかな……
「ウ゛ウ゛ウ゛」
「!?!?」
呻き声がして振り向くと、1匹のゴブリンが立っていた。
ジリジリと近づいてきて今にも襲ってきそうである。
「やァァァァ!!」
王子がそのゴブリンに斬りかかった。
肩の辺りに一撃が入り紫色の血が吹き出す。
「やった!」
だがまだ倒れない。
それに気づかず喜んでいる王子にゴブリンが飛びかかった。
「きゃあああ!!」
「ウ゛ア゛ア゛」
間一髪俺が間に入り斬りかかり、ゴブリンが真っ二つに割れた。
悲鳴とともにその体が消え、何も無くなった。
「油断するな」
「……違うぞ!私が一撃入れたおかげだ!私の手柄だ!」
なんだこいつ…
クエストのクリアだったりモンスターの討伐の経験値は達成者に均等に配られるから手柄とかないのに。
「いや〜大変だった!さぁ帰ろうか!」
周りの草むらから何者かが動く音がする。
何かがおかしい。
「王子!このクエストのタイトルって何だった?」
「え?"ゴブリン達との遭遇"でしょ?」
王子は能天気に腕を頭で組んで口笛を吹いている。
「"ゴブリン達との遭遇"か……そうだ…」
「それがどうかしたの?早く帰って報酬欲しいんだけど」
「ゴブリン"達"なんだ……!このクエスト…ゴブリンは1匹じゃない!!」
周囲を見渡すと草むらから数十匹のゴブリンの赤い目がこちらを睨んでいた。
--続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます