第2話 序二段

 生き甲斐。

 私にとってそれはこの命を爆発させずにはいられない唯一無二の「魂にドカン」と来る存在のことである。


 社会生活や人間関係、空間、空気を経由した存在ではなく、人生と情熱を懸けて命を循環させる生命の根源、人生幹じんせいかん

 喜怒哀楽と運命を司どっては、私の体内にある血液の一滴、細胞の一つ一つに至るまで、全て、どこをどう切っても、崩れず、ブレず、揺るがない唯一無二の生き甲斐。


 たとえ、どんなに心が傷つけられて血まみれになっても、心臓を鷲掴わしづかみにされても、絶えることも、尽きることもない。

 なぜなら、傷や痛みを凌駕りょうがする程の情熱が、鼓動と共に無尽蔵むじんぞうに湧き出て来るから。心の傷の新陳代謝さえ、魂の糧になるから。


 たとえ、不条理で偏見に満ちた棘で刺されても、爆発寸前の炎がうずいては、これこそが生きた甲斐のある人生だと、棘を呑み込んで情熱の薔薇ばらを咲かせる。

 それこそが、生き甲斐。


 そして、私を今日まで活かし続けているその生き甲斐と呼べる唯一無二の存在とは三国志でお馴染み「諸葛孔明先生」である。

 ※歴史上の人物に敬称をつけるのは間違った日本語だと言われていますが、孔明先生を人生の師と仰ぐ私にとって、その規定は不遜ふそんでしかないので敬称をつけること、ご了承ください。


 私が孔明先生と出会ったのは、今から三十年以上前、一九九一年の春だった。

 当時十三歳、中学一年だった私はクラスメートと担任教師からイジメを受けていた。

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