第28話 警察官募集

「喰らえぇぇぇぇぇっ! ギルダーッ! レーザーッ! ブレイドッ!」


 俺は久しぶりに借りることが出来たレーザーブレイドで怪人クモージラを切りつけた!


「グワーッ!」


 ドガーン!


 よし、怪人クモージラを倒したぞ! 地球人も無事だ!


「おのれ! ギルダー! 次こそは必ず息の根を止めてくれる!」


 ガルドネスが慌てて逃げていく! まったく懲りない奴だぜ!


「(来週の水曜日は、午後半休だからその日以外だったら)いつでも来い! ガルドネス! 地球の平和は俺が守る」


 決めポーズもバッチリだぜ! 今日はさゆり先生もいるから新ポーズだ!


 ふふふ、さゆり先生がうっとりしてるように見えるぜ……


「ありがとうございます! ギルダーさん!」


 さ、さゆり先生が話しかけてくれた! 脇汗が止まらない!


「さゆり先生、そして子供達、危険が迫ったら(さゆり先生に限ってはいつでも)俺を呼んでくれ! さらばだ! また会おう!」


 俺は宇宙用エアーバイクで、その場から華麗に去っていった。


 ―――――――――――――――――――――――


「ただいま戻りました~」


 俺が署に戻ると、課長が難しい顔をしながら小冊子を見つめていた。


「おう、お疲れ、どうだった? 怪人は?」


「今日は楽勝でした。やっぱレーザーブレイドは便利ですね。あれ、もう少し軽いと持ち運びが楽なんだけどな~」


「ぜいたく言うなよ……生活安全課からの差し入れで、鬼まんじゅうがあるから食えよ」


「あざっす。いただきます」


 俺が鬼まんじゅうを食べている間も、課長はずっと小冊子を見つめている。


「課長、さっきから何を真剣な顔をして読んでるんですか?」


「いや、来年度用の警察官募集パンフレットなんだけどな、刑事課から『警察官になれて良かったこと』っていうのを寄稿しろって、本庁の広報から言われてるんだよ」


「へえ~」


「まったく、署長も安請け合いするもんだから……あ、そうだ!」


「何すか?」


「ギル、お前、書いてくれよ」


「え~っ!? 嫌っすよ! 課長が頼まれたんでしょ? 課長が書いてくださいよ」


「だってお前、題名が『刑事になれて良かったこと』なんだぞ? こういうものって中間管理職じゃなくて、若手が書くものだろ?」


「だったらミニィさんに……」


「ミニィさんは、刑事になってまだ二ヶ月だぞ、早すぎるよ」


「じゃあ、シュバットさんに……」


「あいつは、逆に中堅過ぎてダメだよ。な? お前が適任なんだよ、頼むよ! な?」


「……銀河横町、おごってくれます?」


「おごる、おごる! 何でも好きな物、飲み食いしていいぞ!」


「……わかりましたよ、書きますよ」


「おお! さすがギル! 持つべきものは優秀な部下だな!」


 ―――――――――――――――――――――――


「それで俺は何を書けばいいんでしたっけ?」


「このQ&Aに答えてくれればいいんだよ。簡単だろ?」


「はいはい、え~っと、なになに……『Q:警察官になった理由は?』か……『安定しているから』っと……」


「却下」


「え~っ、ダメっすか? それじゃあ『福利厚生がしっかりしてるから』っと……」


「却下」


「もう! だったら何て書けばいいんですか?」


「そんな生々しいことを書くなよ。『人々の平和を守りたいから』って書いといてくれ」


「は~い。次は……『Q:ここが大変だと思うことは?』か……『週五で同じ敵と戦うこと』っと……」


「却下」


「え~っ!? じゃあ『急な休日出勤があること』は?」


「却下」


「あーっ! もう! じゃあ、課長が答えを考えてくださいよ!」


「そこは『手強い怪人との死闘が大変です』とか書けよ。お前の答え、正直すぎるんだよ……」


「じゃあ、あと八問あるから、課長、答え考えてください。回答者の名前と写真だけ俺にしてもらいますから」


「なんか腑に落ちねえなあ……」


 俺の名前は宇宙刑事ギルダー! 公務員の一番の魅力は、やっぱり『安定』だぜ!


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