第17話 一日署長

「喰らえぇぇぇぇぇぇっ! ギルダーッ! パーンチッ!」


 俺は必殺技の、ギルダーパンチを、怪人ボイラードにお見舞いした。


「グワ~ッ!」


 ドガーン!!


 よし、怪人ボイラードを倒したぞ! 地球人も無事だ! 


「おのれ、ギルダー、覚えておれよ! 次こそ必ず始末してくれるわ!」


 ガルドネスが、負け惜しみのセリフを吐いて逃げて行きやがる!


「いつでも来い! ガルドネス! 地球の平和は俺が守る!」


 子供達が駆け寄ってくる……だが、今日は構っている時間は無い!


「坊や達、今日はもうお家に帰るんだ! いいね? では、さらばだ!」


 俺は宇宙用エアーバイクで、その場から急いで去っていった。

 ―――――――――――――――――――――――


 大急ぎで署に戻ると、署の前にはTV局がたくさん来ていた。


 やばい! もう来ている! 俺は光の速さでダッシュした。


「ただいま戻りました!」


 刑事課室に戻ると、課長と先輩刑事のシュバットさん、新人刑事のミニィさんが、それぞれの席に座っていた。


 みんなビジネススーツを着ている。


「も、もう来ちゃいましたか?」


 俺が焦りながら聞くと、課長は笑いながら首を横に振った。


「さっき来たばっかりだよ。今、交通課を見に行ってる。もう少ししたら刑事課にも来るから、お前も早く着替えてこい。いいとこ見せたいんだろ?」


「あざっす! 着替えてきます!」


 今日はなんと、あの銀河坂47の不動のセンター、アニエルちゃんが一日署長を務める日なんだ!


 俺はアニエルちゃんの大ファンで、ライブにも欠かさず行っている。


 俺は急いでビジネススーツに着替え、顔と手を洗い、入念に歯を磨いた。


 準備完了! 俺は急いで刑事課へ戻り、その時を待った。


 ガチャリ!


 ドアが開いて、ギャリバン署長とアニエルちゃんが入ってきた。


「みなさん、初めまして! 銀河坂47のアニエルです。今日は一日署長を務めさせていただきます。よろしくお願いします!」


 ……顔、小さい……目、大きい……声、めっちゃかわいい……


「私が課長のヴァンガーです。刑事課は主に秘密結社の捜査と、怪人退治を担当しています」


「わあ! かっこいい! 頑張ってくださいね!」


 アニエルちゃんは課長、シュバットさんの順に握手した。


 いよいよ俺の番だ!


「あ、あの、ギルダーと申します! 俺、アニエルさんの大ファンで――」


 俺が震える手でアニエルさんと握手しようとした、その時――


『ビーッ! ビーッ! 怪人警報発令! 場所は地球の日本! 刑事は現場へ急行せよ!」


 俺が唖然としていると、課長が俺の肩を叩いた。


「おい、ギル、お前の担当だぞ、行ってこい!」


 くそっ! こんな時に! マジか……ガルドネスのバカ!


「……行ってきます」


 俺は刑事課室を飛び出し、急いで着替えて、光の速さで地球へ向かった。

 ―――――――――――――――――――――――


 俺が現場に到着すると、ガルドネス率いる怪人達が子供をさらおうとしていた。


「待てっ!!」


「むっ? 来たか、ギルダー! 行け、怪人マギ――」


「喰らえぇぇぇぇぇぇっ! ギルダーッ! パーンチッ!」


 俺は必殺技の、ギルダーパンチを、名前も知らない怪人にお見舞いした。


「グワ~ッ!」


 ドガーン!!


「ああ! 怪人が! まだ名乗ってもいないのに! おのれ、ギルダー、一度ならず二度までも! 覚えておれよ! 次こそ必ず始末してくれるわ!」


 ガルドネスが、負け惜しみのセリフを吐いて逃げて行きやがる!


 うるさいバカ! 一日に二度も来るな! ただでさえ、お前とは週五で会ってるのに!


 子供達が駆け寄ってくる……だが、構っている時間は無い!


「坊や達、今日はもうお家に帰るんだ! いいね? では、さらばだ!」


 俺は宇宙用エアーバイクで、その場から急いで去っていった。

 ―――――――――――――――――――――――


「ただいま戻りました! あの、アニエルちゃんは……?」


 課長が残念そうに首を横に振った。


「悪かったな、ギル……もう、帰っちまったよ……でも、サインもらっといたぞ、ほら」


 俺は課長からA4の紙を受け取った。


 そこには『ギルダーさんへ! お仕事頑張ってください! アニエル』と書いてあった。


 俺は課長に抱きついた。


「ありがとうございます、課長! 家宝にします!」



 俺の名前は宇宙刑事ギルダー! 後日ライブに行ったとき、アニエルちゃんと目が合った気がしたぜ!

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