続おばかさん ぐちゃぐちゃ編

清瀬 六朗

第1話 動画

 *この小説には高校生の少女どうしが身体を触り合う場面の描写があります。苦手な方はお気をつけください。


 瑠音るねはスマホで動画を見ている。

 向坂さきさか恒子つねこさんと自分が、恒子さんの別荘のマットレスの上で「何か」をしている場面の動画だ。

 はあっ、ふうっ、ふっ、うあん、んっ、……、おおおお、ほっ。

 んはっ、んっ、あう、あっ、こっ、あ、うおっ……。

 恒子さんが性能のいい集音マイクというだけあって、恒子さんと瑠音、それぞれの声が豊かにれていた。

 恒子さんは、白くて、でもまっ白ではなくて、すべすべで、その腕も体も生き物のようによく動く。恒子さんは人間なのだから「生き物のように」ではなくて生き物なのだけど、「生き物らしさ」の次元が違う。腕に、肩に、胸に、おなかに、脚に、それぞれ生命力が宿っている。満ちあふれている。

 その恒子さんの体にくっついたり、ちょっと離れたりしている、色も鈍くて、動きも鈍い、やせっぽちで貧相な体。

 生命力が、体の芯のところに切れ切れにしか通っていません、という体。

 それが瑠音。

 その体が、瑠音……。

 恒子さんに圧倒され、翻弄ほんろうされ、それだけの体が、瑠音。

 最初のころは見るのが苦痛だった。

 でも、恒子さんとこうやって会えない日が続くと、やっぱり見てしまう。

 そこに自分が映っていなければもっといいのに、と何度思ったことだろう。

 でも、と、あるとき思った。

 この色の鈍い子、いい顔してる!

 生命力がほんのちょっとしか通っていないのに、そのわずかな生命力で、こんなにまじめに、何かを求めてる。

 自分がこんな顔を見せたことって、これまであった?

 このあと!

 恒子さんが瑠音の体の動きを利用して瑠音の体を簡単に反対側に向けてしまう。そして、あごを「きゅっ」とやると同時に、首筋の後ろをでる。

 そのときの自分の表情が好き!

 「お知らせ」

 スマホに画面が割り込んだ。

 「岩瀬いわせ成美なるみさんからメッセージが届いています。表示しますか?」

 なんでこんなときに成美!

 でも、無視はできなかった。

 瑠音はため息をついて動画を止め、成美からのメッセージを開いた。

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