第10話

「崇元。悪い思いさせたとしたら謝る。」

「なぜ?儂は全て捨てて来たんだ!今更昔のことなどこれっぽっちも気にしてなどおらん!!」

「そうか。では先の言葉は無かったことにしてくれ。」


ここで俺の生い立ちを話しておこうと思う。

俺は埼玉県川口市の一般的な家庭に生まれた。

父の勝俊かつとしは仕事熱心な人だった。

母の美桜みおは家事と家族が大好きないいお母さんだった。

俺には、兄弟が居なかったがそれでも寂しい思いをすることはなく、両親は俺を大切にしてくれていた。だから俺も両親が大好きだった。

あの事件が起きるまでは。


――新宿警察署

「近藤参事官はなぜその犯人の息子ことご存知なんですか?」

「あぁそのことだが話すと長くなるぞ?」

「もちろん!聞きます!」


これは近藤参事官が警部補として新宿警察署刑事課に勤務していた時の話。

新宿警察署管内で発生した殺人が全ての始まりだった。それからというもの埼玉、神奈川、千葉、茨城、栃木と関東圏内で次々と殺人事件が発生した。その時警視庁を中心とした各都県合同捜査班が設置されたのだが、それらの事件の殺し方などに統一性がないとのことで連続犯ではないとされていた。

そして、1件目の新宿警察署管内で起きた殺人事件の容疑者として浮上したのが仙堂だったのだ。理由は被害者に会った最後の人だから。それだけ。大きな事件になったのに、犯人を捕まえられないなんてことは警察の維新に掛けても起こしては行けないとして、こじつけで逮捕したのだ!もちろん、その他の事件も同様若しくは理由をつけていたが、つい1年ほど前に驚くことが起きるのだ!それは、それらの事件の犯人が自首したこと。それにより一連の事件が1人の犯人による連続殺人であることが判明した。動機はただやりたかっだけ。つまり被害者に関係性はなかったのだ。

警察は、誤認逮捕というレッテルだけでは済まなかったのだ!なぜなら一連の事件の犯人とされてきた者たちは、その残虐性及び反省の面が見られないことから死刑となり執行済みだったからである。

当時の各報道局は仕切りに警察のミスを報道しまくった。『警察史上一番の失態』とされ、今でもたまにそれに関係する番組もあるほどだからどれだけ大きなものだったからが分かる。

俗に『関東無差別連続殺人』と呼ばれた。


「そんなことがあったんですね。」

「あぁ。それでその時私は別の者が仙堂の取調べ中息子の仁を世話していたのさ。」

「それで、その犯人とされた人たちの家族はどうなったんですか?」

「そんなの知りたくもないが知る必要もないだろ。簡単に想像できる!」

「…。」

「過去は変えられん。失敗した時はその後どうするかが大事だ!というとこであの大木場とかいう奴調べておいてくれ!」

「はい。」


――岩田係長の自宅

「あなたご飯は〜?」

「ん。今日ちょっと調べないといけなことがあってな。終わったら食べる!」


『関東無差別連続殺人』で検索。

関東圏内で発生した無差別殺人事件。

当初発生した11件は全て関連のないものとし、それぞれ犯人が逮捕され死刑宣告を受け死刑が執行された。しかし、1年前犯人が自首し連続殺人事件として幕を閉じた。これにより警察ないし国は、無関係の11名を法律の名のもとに殺したのだ。……


「ずさんすぎる。犯人たちの遺族は世間やマスコミからの誹謗中傷等で自殺した者、海外にいった者。そりゃそうか。」


岩田は知らないでは済まされないが、自分が就いている仕事がどれだけ責任のある仕事なのか改めて感じた。


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