第5話

「お久しぶりです近藤参事官」

「おぅ久しいな岩田」

「なぜ参事官が新宿署に?」

「それは君も分かるだろ。こんなことで君に会いたくはなかったがね。私は今組織犯罪対策部にいるから動かねばならんのだ」

「そうでございましたか。ではこちらに?」

「あぁ対策室を作るよ!そしてまずだが君たちに1つしてもらいたいことがあるのだよ!」



――『キャバクラアラクネ』 9:00頃

「おいおいなんで俺を入れてくれないんだよお」

「申し訳ございません!営業時間外にお客様をお入れすることは出来かねます。」

「お客様?俺は江藤組の車田だぞお?組長からの伝言を伝えに来たんだァ!!!さっさと入れんか」

「ですが……」

その時、トントン車田の肩が何者かに叩かれた。

「ああん?」

「こんにちは。新宿警察署刑事課の岩田と申します。110番がありまして!お店に知らない人が入って来てると。あなたですね?現時刻を持ってあなたを不法侵入で現行犯逮捕します!」

「はあ?なにいっ「はい話は署で聞きますから」 「はなせっおい!ゴラァ」「うるさい」

と岩田のペアである豊田が手錠を掛け連行していった。


「申し訳ございません!ご迷惑はおかけしませんので」

「は、はあ」

なんとも言えない状況にアラクネのスタッフとはいえ空気のような回答しか出来なかった。



???「すげえ言われた通りになってらあ」



――東京赤坂 江藤組本部 8:00頃


今現在江藤組は混沌としている。

組を切り盛りする執行部と呼ばれる、若頭、本部長、事務局長が一気に居なくなったのだから。

もうヤクザとはいえ秩序なんて日に日に無くなっていった。


「組長ぉ大変す!またサツが来ましたあ」

「またかよ!ふざけやがったこんな時に」


「こんにちは近藤です!」

「またお前か!署になんか行かねえからなあ!!さっさと死にやがれ!!!」

「はい!本日は任意ではなく、家宅捜索を行いに参りました」

「は?」

「こちらが家宅捜索の令状となります!」

「ん?被疑者車田克樹にかかる覚せい剤取締法違反容疑事件について、家宅捜索を許可する!?なんだとぉゴラァ」

「はい!では現時刻9時13分をもって家宅捜索を開始いたします!」


そこからは早かった。

親のいない子供たちのように、これまで頭脳を担っていた者たちがいない組はただの烏合の衆となる。そのためあちらこちらから違法取引、違法薬物等がわんさかと出でくる。組の若いものに至っては警察官に殴り掛かる始末。


同日警視庁は、江藤組組長江藤重昌を覚せい剤取締法違反等複数の容疑で逮捕したと共に、同組の構成員も複数人逮捕したと発表した。


これで事実上江藤組の力が地に落ちたという事だ。

なぜ警察がここまでするかは一重に大黒会が潰れ江藤組も潰せると睨んだからだろう。


???「はっはっはっ!もう凄すぎて笑えてくる」



――警視庁新宿警察署

「何故だ!!何故出てこない江藤組の幹部連中は根こそぎ逮捕したのに!!!何故大黒が殺されたことに関連するものがないのだ!」

「ではやはり本件は江藤組ではない誰かの仕業なのでは?」

「だとするともう手掛かりがない!」

近藤と岩田は頭を抱えるしか無かった。


今回江藤組の組員を逮捕し、その容疑で組長宅を家宅捜索、そこから本件の証拠を見つける手筈だったのだ。

ではなぜ車田の容疑が不法侵入ではなく、覚せい剤取締法違反なのかは、逮捕した車田から覚せい剤反応が出たため、不法侵入から覚せい剤取締法違反に切りかえたのだ。そのほうが警察的に家宅捜索の説得力が上がるからである。

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