第3話


「師匠!?放してくださいよ!!」


「ダメ~。今放したらこの人に危害を加えるでしょう?」



魔女の格好をした少女は今、縄のようなもので縛られ身動きがとれない状態である。

どうやら師匠と呼んでいる女性が出したものらしい。


魔女の格好をしたと言ったが、少女は先ほど自身が持っていた杖から稲妻を繰り出し、でかい獣を撃退した。

恐らく本物の魔女である。今は縛られて杖を手放している。


師匠(仮)の女性もきっと魔女なのだろう。

よく見ると師匠(仮)はあまり魔女感の無い格好である。豊満な胸しか目に入らない。



「ありがとうねお兄さん。マイトを助けてくれて」


師匠(仮)は俺の方を向いてそう言った。



「えっ、いや俺はどっちかっていうとその子に助けられたというか。何もしてな



くはない。



「助けられた覚えなんか無いわよ!!むしろ私のこと何度も叩きやがったんですよ師匠!!」


「そうでしょう?それがあなたを助けたのよ」


「「は??」」


俺と少女が声を合わせて反応した。



「あっそうそう自己紹介してなかったわね。私はアリスト・トレフェン。そしてあの子はマイト・トレフェン。よろしくね」


「はぁ。あ、俺は藤木新一[ふじき しんいち]です。よろしくお願いします。」


「あまり聞いたことがない響きの名前だけど・・・・。何処から来たの?」


「えーと。それが何故ここに居るのかわからなくて。さっきまで別の世界に居たんですけど」


「まぁ。もしかして異世界転生の方?」


「異世界転生知ってるんですか・・・・。多分そんな感じです」


「すご~い!!本当にあるのね!!良かったわねマイト」


「何が良いんですかとにかく放してくださいってば!!」



この間、少女ことマイトはずっと縛られたままである。



「藤木さんに手出さない?」


「・・・・出しません」


「嘘でしょう」


「出しませんから放してください!!」


「そう・・・・」




マイトは解放された。




「ところでさっき俺が叩いて助けたとかって言ってましたけど、どういうことですか?」


「あぁそうそう。この子ね、いじめられることでMPが回復するの」


「「は??」」


またしても俺とマイトが声を合わせて反応した。



いや、何でマイトも「は?」って言ったんだ。




「なんですか師匠それ!?初めて聞きましたよ!!」


「でしょうね。初めて言ったもの」


「大体今までそんなことされなくても毎日魔法使えているじゃないですか!!」


「その方が回復量が大きいってこと。よく罵倒したりお尻ペンペンしてあげてるでしょう?それはこういうこと」


「えぇ・・・・」



マイトはとても困惑しているようだった。そりゃそうだ。俺も困惑している。



「さて、こんな所でずっと話すのもアレだし、そろそろ帰りましょうか」


「・・・・。」



まだ受け入れられていないようである。

まぁ時間が経っても受け入れられるようなことではない。



「藤木さんもいらっしゃいな。住む所無いでしょう?」


「あ、はい」


「ダメですよ師匠こんな男泊めるなんて!!」


「あなたに良い悪いを決める権利はありません」


「・・・・。」




とりあえず、俺はこの二人が住む家に泊めてもらうことになった。

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