親友はエナジーバンパイア

ばたー

親友はエナジーバンパイア

 エナジーバンパイアとは、周りからエネルギーを吸い取る人のことである。


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 私、野中早紀には、三枝結乃という親友がいる。多分みんな、私とユノは、仲がいい二人組だと思っているだろう。そりゃあそうだ。一年生からの仲なんだから。でも、本当は、私はユノのことを「親友」とは思っていない。実をいうと、あんなの「エナジーバンパイア」だと思っている。しかも、一年の時からずっとこの人とは友達になりたくないと思っていたのだ。だがしかし、気づいたら「仲いい二人組」みたいになってしまっていた。


 それに、一年からの仲だからこそ、本音である「友達じゃない」は言えない。

 第一、「友達」っていじったりバカにして笑うものなのかな?と私は思う。それじゃあもう、イジメじゃないかって。

あと、私はテレビとかユーチューブでやってる内容があいつを作る材料になるんだと思う。子供を泣かせて笑ったり、ドッキリしかけてニヤニヤしたり。私は、テレビやスマホの中とか、教室でのそんな光景を見て、いつも思う。「友達って何だろう」って。

あんなことの何が面白いんだろう?


 で、何で私はユノのことが嫌いなのかっていうと……


1.私の名前をからかってくる。

 ユノは、私のことを「オナカ」って呼ぶ時がある。私は、野中って名前が割と好きだからこそ腹が立つ。だから無視してたら「オナカさーん」とか呼んできてさ。私が怒って振り返ったら、ニヤニヤして「あ、ノナカだったか。ごめんね〜」とか言ったりするし。


2.遊びに誘ってくる

 実は私、公園とかで子供で集まって遊ぶのがあんまり好きじゃない。

何でかというと、何年か前に、ユノから遊びに誘われてさんざんいじられ続けたことがあり、その時から「遊び」は結構キライだ。


 ユノは、私を無理やり遊びに誘ってくる。で、「ムリ」って言ったら、「何で?」って。

 あ、言い忘れていたけど、私は実は小説を書いているんだ。

で、「小説を書いてるから遊べない」って言ったら、パソコンでも小説を書けることを知らないのか「何のペン使ってるの?」とか「今、原稿用紙何枚まで書いてるの?」とか「それ、ただのシュミでしょ?」とか聞いてきたあと「小説はいつでも書けるから遊ぼうよ」とか言って、無理やり遊びに誘う。これはちょっとひどい。

ちなみに、今までに色んな理由をつけて誘いを回避している。が、それもそろそろ限界かもしれない。

 

そうそう。「遊ぼう」って言われて、私は「いや…今日疲れてるし…」って言った日もある。その日は、先生にイキナリ学級会の司会に指名されて、リハーサルも打ち合わせも無しにぶっつけ本番だったから本当に疲れてた日で…そしたらユノ、何て言ったと思う?ちょっと怒り気味に「みんな疲れてるんだよ!だから遊ばなきゃ」って言ったんだよ!信じられないでしょ⁉

で、その時は「なに言ってるの、『遊び』って『遊ばなきゃ』で遊ぶものじゃないよね?」って言って遊びを回避した。


3.私を急に叩いたりする

 私は何もしてないのに、いつも急にバックで叩いてきたりする。いつも無視してるけど、私がいらだって反撃したら「あ、反撃してきたし。ナマイキ!」とか言うんだよ。いつも叩いたり蹴ったりしてきて、注意すれば言い訳してさ。本当、生意気なのはどっちだよって感じ。

でね、この前だってね…


「………さん?のな…さん!」


「野中さんっ‼‼」


 やばい!今は授業中なんだった!

たしか、あれ?何の授業だったっけ?

そう思いつつ、机に突っ伏していた顔を上げる。


「野中さん?ちゃんと授業を聞いてましたか?」

「は、はい」

 

 ホントは聞いてないけど。正直に言ったら怒られるし…


「じゃあ、今何の話をしていたかわかりますか?」

 う、痛いところをついてくる…

「……」

「これからは、授業をちゃんと聞いてくださいね?」

「…はい」

 うう、怒られた。で、今は何の時間だっけ?

ていうかこういう時に限って…

「オナカさーん!さっきの、ちゃんと授業聞いてたー?」

 ほらきた。ユノだ。そう。ユノはこの前の席替えで、私の後ろの席になってしまったのだ。私って、本当についてない。

「オナカじゃない、野中!」

「あ、そっか。サキはノナカだったか」

「そーですよ。野中ですよ」

 って先生がまたこっちを!

「三枝さん!ちゃんと前を向きなさい!」

「は、はい」

 あ、私じゃなかった。よかった。

そういや、ユノは先生の前では緊張してこわばった顔になったり、ふざけなかったりするんだよなぁ。最近気づいたけど。でもまあ、そういうところは私と同じかな?


「で、次に卓球クラブ。卓球クラブはその名の通り、卓球をするクラブです。そして次。今年新しく加わった、ボランティアクラブ。このクラブは……」

 そうだった、やっと思い出した。

この時間は、クラブ決めをするんだった!で、今は説明中か。あ、私もそろそろクラブを決めないといけないかも。

 

 でも、入るクラブは決まってる。去年新しく追加された、読書クラブ!ただ読書するだけの地味なクラブなんだけどね、クラブの生徒同士でおすすめの本を紹介して借りあったり、先生と一緒に自分に合った本を見つけたりとかいうこともするからね。見識の幅を広げられるよ!

 しかも、「この作者の表現好きだな。参考にしよう」とか、そういう「作家目線」でも見識の幅が広がるし、ホント最高のクラブ。だから、クラブは絶対読書クラブにするんだ。絶対!


 と思って、さっき配られたクラブ一覧表を見たら……

あれ?読書クラブがない?何で!?

「最後に、今回無くなった読書クラブの代わりに出来た、お悩み解決クラブです。このクラブは……」

 読書クラブ、やっぱり無くなってたの?

でも、いいクラブがあるはずだよね!早速クラブ表を確認しよう。


 ①料理・裁縫クラブ

私、どっちもあんまり好きじゃないし……


 ②スポーツクラブ

スポーツは大の苦手だし…

 

 ③折り紙クラブ

さすがにずっと折り紙するだけはなあ…


 ④イラストクラブ

絵にはあんまり興味ないし……


 ⑤あなたの推しを語るクラブ

いつの間にこんなのができてたの?


 ⑥音楽クラブ

歌うのは嫌いだし……


 ⑦アイドル好き集まれ!クラブ

何このクラブ。


 ⑧卓球クラブ

卓球やった事ないから不安だし……


 ⑨ボランティアクラブ

めんどくさそう。


 ⑩先生のお手伝いクラブ

先生の手伝いなんてする人いるの?


 ⑪お悩み解決クラブ

私の方がお悩み相談させてもらいたいんですけど!



 クラブはこれで全部なんだけど、私が入れそうなクラブなんてなかったな……


「これでクラブ説明を終わります。クラブを決めた人は、黒板に書いてあるクラブの下にチョークで自分の名前を書いてください。早い者勝ちですよ!」

 先生が言った瞬間に、クラスのみんなが黒板に向かってどやどやと押し寄せる。

どうしよう、入るクラブ決めてないのに……とか思ってたら、さっき、やや暴れつつチョークを奪い合う大群の最前列に行って来たユノがこっちに来ている……しかも顔が怖い。


「サキ、クラブ何にする?私、『あなたの推しを語るクラブ』にしたよ!」

 え?てっきり、また変なこと言うのかと思ったけど……

ていうか意外だなー。ユノの事だから、どうせイラスト一択にすると思ったのに。

まぁ、去年もイラストだったしね。他のも入ってみたかったのかな。


「で、ユノ、推しって誰?」

 ユノが聞いてほしそうな顔をしているから一応聞いておいた。

どうせ人気ブイチューバーの陽ちゃんだろうけどね。

「そりゃあもちろん、陽ちゃんに決まってるでしょう!」

「そっかぁ。ていうか私、まだクラブ決めてないんだけど」

「早く決めた方がいいよ。迷ってたらサキクラブあまりものになっちゃうよ!」

「うーん、そうだよね…」


 確かに、余りもので「アイドル好き集まれ!クラブ」とかになったらイヤだなぁ。でも、ここがいい!ってクラブはないんだよなあ…

「あ、あと一人ですね」

 先生が言った。

「野中さん、あなたのクラブ、余りものになっちゃったけど」

「えっ…!」

「まあ今更言ってもクラブは変えられないし、いいよね」

 どうしよう、迷ってるうちに全部決まっちゃった…

でも、今回は仕方ないや。で、えっと、余ってるのは?「お悩み解決クラブ」…?

 うわあ、これかぁ。まあ、ヘンな推しクラブとかじゃなくてよかったけど。

て、あれ?このクラブ、私のほかに立候補者がいない……?

しかも、三、四年からのメンバーが0人……何で?


「ああ、そのクラブはね、」

 私が首をかしげていると、私の視線に気づいた先生が言った。

「人気がなさすぎてね、一クラスでメンバーが一人、出るか出ないかくらいだそうよ。だから、メンバーはこのクラスであなただけ」

 ぐぇ。

「しかも、本当に人気がないから、このクラブのメンバーは今のところ、あなたと、他のクラスの生徒二人と六年生が一人だけよ」

「ええ!?」

 私、なんてついてないんだろう。

でもしょうがない。いさぎよく、余りものクラブにしよう。

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