第6話 幼馴染みと本音

冬華の頬が、赤く染まっていた。

「えっと、優ちゃん?その・・・」

「はぁ、僕はなんてことを。弱ってる冬華に付け込んでとか思われたくなくて」

「優ちゃんはそんな人じゃないでしょ。私は、知ってるよ」

僕は、一度呼吸を整える。

冷静にならなきゃ。

どうせ、気づかれてるんだろうし。

「僕はさ、冬華。

太陽のように明るくていつも元気いっぱいな冬華も好きだ。

でも、今の弱っていて壊れそうな冬華を見ていられないよ。

どうして、そんなになる前に助けられなかったのかって」

冬華の顔が一段と赤くなった。

彼女は、枕を抱えて抱きしめて顔を埋める。

「優ちゃんの匂いがする」

「そりゃあそうだ、僕のベッドで、僕の枕なんだから」

なんだか照れくさい。

そんなに匂い嗅がなくても。

「やっぱり優ちゃんは私の内面を見てくれるんだね。

しおらしい私はダメかな?」

枕から目だけ出して僕の方を向いてくる冬華。

「ダメなんかじゃないよ。でも、そんな冬華を見てると抱きしめたくなるくらい愛おしくて、優しくしたくなるよ」

僕は、そんな冬華を見てるとすごく甘やかしたくなってしまう。

「えへへ、そんなことしたら優ちゃんなしじゃ私いられなくなっちゃうよ」

「それならそれで僕は嬉しいけど。

好きな人を独り占めできるんだから」

あ~、ダメだ。本音しか言えなくなる。

もう、隠すことはできそうにない。

「元気な冬華も好きだ。

でも、いまの弱弱しい冬華も好きだ。

どんな冬華も僕は好きなんだよ。

もう誰にも渡したくない。僕のそばにだけいてよ、冬華」

僕は、あの卒業式の日に置いてきた想いを口にしていた。

そう、僕は冬華が好きだ。

ずっと好きだった。

生まれた時からお隣で。

一緒に成長してきた。

だから、冬華の事は知ってる。

こんなに弱弱しい冬華も好きだって。

ホントは、無理して明るくしているのもほんとは知ってる。

無理して、周りを引っ張っているのも知ってる。

ホントは、引っ込み思案で心配性なとこも知ってる。

いつも、周りに見せてるのが本当の冬華じゃないことも。

「外で見せてる冬華が本当の冬華じゃないこと、僕は知ってるよ。

いつも無理ばっかしてるのも。

僕の前なら無理しなくていいんだよ」

「やっぱり、優ちゃんには適わないね。

あのね、私も優ちゃんのこと好き。

でも、怖いの。もう誰かに裏切られるのは」

僕は、冬華を抱きしめた。

彼女が、つらそうな顔をしていたから。

「冬華、僕はもう逃げないよ。

僕は、冬華がいらないって言わない限りずっとそばにいるよ。

優しいしか取り柄のない僕だけどさ。

ずっとそばにいる。

冬華の傷が治ったとしても、僕はずっと君から離れないよ」

「ありがとう、優ちゃん。

あのね・・・私も優ちゃんがいらないって言わない限りそばにいたいし、いてほしいの。

優ちゃんの優しさなしじゃ、私もう生きていけないから」

まだ、恋人じゃなくてもいい。

幼馴染みで、友達以上で恋人未満な中途半端な絆でもいい。

冬華を支えられるなら僕はなんだっていいと思った。

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