青春小説

 青春時代とは渇望と苦悩の時代だ。青春を生きる人らは、何か特別なことをしたい。何か特別な境遇に身を置きたいなどと考える。親や教師、世の流れに逆らってみたりするのも特徴だ。青春時代を過ごす人らはまだ成熟しきっていない。自分が何者か、どうなりたいのか、しっかりと定まらずに漂っている。いうなれば心に穴が開いているといっていい。それを埋めるため、行動する。その過程で苦悩もする。その様子は様々だ。


 太宰治の『葉桜と魔笛』では、妹への恋文を通して、妹は病気によって満足にはいかない青春を。姉は看病によって失われた青春を夢見る。そして叶わぬ夢だと苦悩している。


 三浦しをんの『光』も青春小説といえるだろう。離島で暮らす男女の学生。同年代がほとんどいない島で、二人は性行為に明け暮れる。そんなある日、離島で大規模な水害が発生。島の住人が多く死んだ。二人は離れ離れになり、大人になる。しかし、主人公である男の方は大人になっても変わっていなかった。島での青春を忘れられず、心にくすぶらせていたのだ。女が本島で芸能人として成功したのを知ると、自分の家庭を捨てて女のもとに向かう。そこで性行為や青春を押し付けるが、女に拒絶されて捨てた家族の元へ戻るのだ。しかし、離島での青春を忘れたわけではない。妻と過ごしながら、女との青春への欲望を隠し続けるのだ。


 青春時代とは渇望と苦悩の時代。何をしてどうなるのか、青春を迎え、越えてどう思うのか。青春を生きた人らの結末は様々だ。ただ、渇望して苦悩するのは誰しもが通る道であるように思う。

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