第2話 スキル

2.スキル








自動運転のタクシーに乗る事30分、自動運転専用の高速道路を通ったのであっという間に目的地に着いた。

近くには『日本ダンジョン協会唐沢支部』があり、目の前には石造りの大きな門が見える。この先がGランクダンジョンだ。


Gランクダンジョンは入場許可書の指輪さえあれば受付に行く必要もなく自由に入っていいのでこのまま入る事にする。

石造りの大きな門に近づいて入口横にある端末に指輪を近づける。


ぴっ『ライセンスを確認、入場を許可します』


女性のシステム音声が流れて石造りの大きな門がゴゴゴと音をたてて開いていく。


『10秒後に扉を閉めます、早めにお通り下さい』


音声にせかされるように門の中に入っていく。門の向こう側は洞窟の様になっていて薄暗いが照明が設置されているので手持ちの明かりは必要なさそうだ。


「ここがダンジョン内か」


洞窟だからか少し肌寒い。二の腕を抱えるように手でさすっていると前方から野球ボールぐらいの大きさの光の玉がふよふよと飛んでくる。


「お、こいつが『ふわぽん』か……」


『ふわぽん』とはGランクダンジョンで出てくる魔物でめちゃくちゃ弱く攻撃してくることも無い。ふわふわとした見た目とポンっと軽く叩くだけで倒せるのでそんな名前になった。


見た目も可愛らしくピンクだったり青だったり様々な色の種類があってグッズ展開もされているほど人気がある。


取り合えず倒してみよう。


近づいてきて自分の周りをふわふわと飛んでいる『ふわぽん』を軽く叩く。


ポンッころん


キラキラとした粉が舞って小指の爪サイズの透明なビー玉が地面に落ちる。このビー玉みたいなのが魔石だ。


魔石は新たなエネルギーとして社会で有効活用されているが『ふわぽん』からとれる魔石はエネルギー量が少なすぎて魔石として価値がなくクズ魔石と呼ばれている。

そんなクズ魔石でも初ダンジョン記念なので持って帰るため背負っているカバンに適当に突っ込んでおく。


今はまだ大丈夫だけどこの先ダンジョン攻略していくなら【アイテムボックス】系のスキルか空間魔法が付与された拡張カバンが欲しいなぁ、でもカバンは最低でも300万からだったか?高いよなぁ。

それに【アイテムボックス】などの収納系スキルは手に入れるのは運しだいだしな。


「お?分かれ道か、どっちに……どっちでもいいか」


少し進むとすぐに分かれ道に出会ったが少しだけ足を止めてすぐに右の方へ進む、Gランクダンジョンはどれだけ適当に進もうと長くても3時間もあれば踏破できるので気にせず進む。

それぐらい簡単なダンジョンなので地図も買ってこなかった。Fランクダンジョンからは地図も安いし一応買っていくつもりだ。無くても行けると思うが一応ね。


歩いていると結構な頻度で『ふわぽん』に遭遇するのでそのたびに軽く叩いて倒していきつつ魔石も一応拾っていく。

『ふわぽん』を倒した時に出てくるキラキラとした粒子は一応素材らしいのだがそれ専用の道具がないと採取できないし、採取したところでそんなに高く売れるわけじゃないので素材は無視する。


『経験値が一定値に達しました、レベルが0から1に上がりました』


「お?レベル上がったか」


指輪からポップが飛び出し女性のシステム音声が流れる。何をどうやって検知してレベルが上がったことを教えてくれているのかわからないが便利なので気にしない。


ちなみにこのシステム音声は『日本冒険者協会』がデフォルトで設定している声で無機質ながらも女性らしさのある声から一部の冒険者からは『システムさん』の愛称で呼ばれている。


この音声は設定で別の音声に変える事が出来るので自分の好きな声優だったり俳優、中には自分自身の声にしてる人なんかもいるみたいだが。俺はこのままデフォルトでいいかな。

好きな声優はいるがこの音声は他の人にも聞こえるのでふとした時に聞かれたら恥ずかしい。

音声は設定でオンオフできるので消しておこうかな?音声を消してもポップは表示できるし。ポップ表示も自分だけに見えるように設定しておこう。


閑話休題。


レベル上がったしステータスを見ていこう。



名前:神薙 響   年齢:15


レベル:0 → 1


STR:8 → 9

VIT:5 → 6

AGI:6 → 7 

DEX:10 → 11

INT:6 → 7

MND:5 → 6


≪スキル≫





おー、やっぱり全部が上がったか。


ステータスは基本的には全体が1づつ上がっていく、しかしこれだと初期ステータスが高い人がそのままレベルが上がっても高くなり初期値の低い人はそのまま低くなってしまう。

そこでステータスに変化を与えるのがスキルだ。


例えば【剣術】スキルを手に入れた人は必然的に剣を使ってレベルを上げていくことになる。 

すると不思議な事にステータスが前衛よりに上がっていくようになる。

具体的にはSTRやVIT、AGIなどが上がりやすくなっていきINTやMNDは上がりにくくなっていく。


逆に【火魔法】スキルなどの魔法スキルを覚えるとINTとMNDが上がりやすくなるがSTRやVITは上がりづらくなっていく。


では【剣術】と【火魔法】を同時に覚えてしまう魔法戦士タイプはどうかというと、積極的に使っていくほうのステータスが伸びる。

【剣術】を使えば前衛よりに【火魔法】を使えば後衛よりに。両方を均等に使えばバランスよく育つ、そのかわり特化した人には勝てないステータスになっていく。


そして今の俺はスキルもなく、何かに特化した行動をしているわけではないのでステータスが全体的に上がっていくのだ。


そう言われると最初からスキルをもって特化させたほうがいいように聞こえるが、ステータスは装備でも上げる事が出来るのでよっぽどエリート思考でなければ俺みたいに気にしないでレベル上げるのが一般的だ。


どれだけ初期ステータスが高かろうと最初からステータスを特化させようと。結局はちゃんとレベル上げている人のほうが強い。


確か今の最高レベルって報道されている限りではレベル170ぐらいだったか?


どうやったらそんなにレベルを上げれるのか意味不明だし、そんなにレベルあがったらステータスなんてもはや化け物レベルだろう。

装備もいい物付けていそうだし一人で国を相手にできるレベルなんじゃないか?


そんな風に考え事をしながらも歩きつつ『ふわぽん』を倒していく。


ポンッころん


ポンッころん


ポンッころん


毎回落ちた魔石を拾うのは疲れるな、腰を壊しそうだ。落ちる前に拾えないかな?


ちょうどいいタイミングで追加の『ふわぽん』が来たので試す。


ポンッきゃっち!


近くまで来てくれるから出来る事だなこれは。

落ちる前に拾えるなら移動速度あがるなっと思った瞬間目の前に大きな扉が見えてきた。


「ボス部屋に着いちゃったか」


さぁこれから楽に集められるぞって所にボス部屋が見えてちょっとがっくりきた。けどまぁそもそもGランクダンジョンって狭いし仕方ないのかな。


鉄の扉にはレリーフが刻まれていて中央に大きな『ふわぽん』の絵が描かれている。

ボス部屋にはこうやってボスの姿が扉に描かれている事がほとんどだ。なぜほとんどかと言うと、まだ誰も攻略していないボス部屋だと扉には何も描かれていなくて何が出てくるかわからないからだ。

その何が出てくるかわからない危険性から新しく見つかったダンジョンは高ランクのクランが調査員と一緒にダンジョンに潜りランク付けをする。

まぁ何が出るかわからないって言っても道中で出る魔物はだいたいボスの下位存在だから予想はしやすいんだけどね。


まぁそんなわけで当然攻略済みのGランクダンジョンなここは扉に『ふわぽん』の絵が描かれている。


鉄の扉を開けて中に入ると部屋の中央に光るバランスボールぐらいの大きさの『ふわぽん』がふわふわと浮かんでいる。


「でっかぁ……」


事前に何がでるかは知っているが百聞は一見に如かずとはこの事か。想像していたよりはるかにデカい『ふわぽん』だった。

ボス『ふわぽん』も普通の大きさのと一緒で、攻撃性が無いから近づいてきて自分の周りでふわふわ浮いているだけだ。


「何もしてこないのを倒すのは気が引けるけど仕方ないよね、だってここダンジョンだもの」


そんな言い訳をいいつつボス『ふわぽん』を勢いよく叩く。


ボンッころん


ボス『ふわぽん』はその大きさにたがわず大きな音をたてて消えた。魔石も小指の爪の先ぐらいの大きさから一回りぐらい大きくなった気がしないでもないかもしれない。

気のせいかな......?


カバンに入れてた魔石と見比べてみるが本当に若干、よく見ないと分からないぐらいだが少し大きい。



『レベルが1から2に上がりました』




名前:神薙 響   年齢:15


レベル:1 → 2


STR:9 → 10

VIT:6 → 7

AGI:7 → 8

DEX:11 → 12

INT:7 → 8

MND:6 → 7


≪スキル≫




「ふむ、まぁこれは順当かな。次はいよいよスキルか……」


ステータスを一通り確認してからボス部屋の中央へ視線を向けるとやたらと豪華な宝箱がいつの間にか鎮座している。箱には宝石が散りばめられていて見るからに価値がありそうだが、この宝箱は外へ持ち出す事ができないしそもそもあの宝石は偽物らしくなんの価値もないらしい。【鑑定】スキルを持つ人が昔に調べたって話しだ。


この宝箱はGランクダンジョンに初突入で初踏破、なおかつソロの場合のみ出てくる宝箱で中にはスキルオーブが入っている。

どうやって初めてなのかどうか調べているのか分からないがそこはダンジョン側の不思議パワーで調べているんだろう。魔法が現実にある世界だ、多少不思議な事があってもそんなもんかで済ませないと色々と気になりすぎる。


ギラギラと輝いている宝箱を開けると占い師が使っていそうな大きさの透明な水晶玉が出てきた、これがスキルオーブだ。


スキルオーブを箱から取り出し手に持つ、少しひんやりしていてつるつるした感触が手に伝わってくる。


たしかこのまま使いたいと念じれば……あっ


『スキルを獲得しました』


念じればいいんだよなーって考えたらそれがトリガーになったのかスキルオーブが手の中で光になって消えていった。


「帰ってから使おうと思ってたのに……まぁいいや確認しよう」


ポップ表示された画面を押してステータスを開く。



名前:神薙 響   年齢:15


レベル:2


STR:10

VIT:7

AGI:8

DEX:12

INT:8

MND:7


≪スキル≫

<ユニーク>【GunSHOP】Lv:1 ▽




「おぉっ!ユニークスキルだ!!でもこれは……【GunSHOP】、銃のお店?」


ユニークスキルは他とは違う特殊なスキルで【剣術】や【火魔法】みたいに有名で持ってる人もそれなりにいるようなスキルとは違い、唯一無二の世界で一つしか存在しないスキルだ。


中には情報を開示しているユニークスキルがある。

有名なのでいえば物語でもよく出てくる【勇者】や【聖女】のスキル。【剣聖】だったり【賢者】だったりの有名なユニークスキルがある。

名前からしてスキルって言うより役職や職業名っぽいが何故かユニークスキルとなっている。


確かスキル名の横の▽を押せば詳しくみれるんだっけ?


スキルの効果や物の状態を見る有名な【鑑定】スキルがあるが、自分自身のスキルに限っては【鑑定】が無くとも詳しく見る事ができる。



<ユニーク>【GunSHOP】Lv:1 ▼


Lv:1 <GunSHOPを開いて売買が出来る> ▽



「説明これだけ?すくなっ!それに売買?ここからさらに何かあるのか?」


<ユニーク>【GunSHOP】Lv:1 ▼


Lv:1 <GunSHOPを開いて売買が出来る> ▼

 武器:▼

   〝訓練用非殺傷ハンドガン〟5GP

   〝訓練用非殺傷サブマシンガン〟10GP

   〝訓練用非殺傷ショットガン〟10GP

   〝訓練用非殺傷アサルトライフル〟15GP

   〝訓練用非殺傷スナイパー〟30GP

   〝ハンドガン〟50GP~▽

   〝サブマシンガン〟75GP~▽

   〝ショットガン〟80GP~▽

   〝アサルトライフル〟100GP~▽

           ・

           ・

           ・

 防具:▽

消耗品:▽





「項目多いな!?流石に今のままじゃ全部は見きれないし、一回家に帰ってからじっくり見るか……」






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