キャッシュレス決済

仁科佐和子

第1話 ファミレスにて

 新規オープンのファミレスにやってきた。全品半額に釣られた客が押しかけ、店は大繁盛だ。


 慣れないオープニングスタッフがワタワタしているのもご愛嬌。一時間待ちもなんのその、俺は無事夕食にありついた。


 会計でも列に並び、ようやくレジにたどり着いた俺は伝票を差し出す。


 カウンターの向こうには真面目そうな女の子。おそらく学生バイトだろう。

 気の弱そうな彼女は怒涛の会計ラッシュに目を白黒させている。


「ご来店ありがとうございます! お会計させていただきます」

 マニュアルに沿って挨拶しながらも、声は震え目も泳いでいる。大丈夫か、この子?


「えっと、ハンバーグ定食1つとドリンクバー1つでよろしかったでしょい?」


 ……噛んだ。

 しかも、なんて言おうとしたのかめっちゃ気になる噛み方だ!

 せめて『よろしかったでしょうね?』とか言われたなら『よろしかったでしょうか?』と『よろしかったですね?』が混ざった結果、上から目線になっちゃったと結論づけられるが『よろしかったでしょい?』ってなんなんだ?


 不意に噛んだことで、女の子は真っ赤になって挙動不審が加速している。もう頭の中ぐちゃぐちゃになってんだろうな。とりあえず落ち着けと言ってやりたい。

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