第29話
「そうだね。グッテンならいいかな。でも、僕は気楽な一人の方がいいけど」
「でも、本当に館の亡霊には注意しないと。俺も行きたいな。でないと行けばよかったと後悔しそうだ」
コルジンと僕は赤いドアに辿り着いた。
コルジンがドアをただいまと開けると、せせこましい部屋の中にグッテンがいた。
「やあ」
グッテンはレタス片手に僕たちを待っていたようだ。そういえば、もう昼食の時間か。この館の中には時計ってあるのかな。
従兄のお兄ちゃんが住んでいるような1Kより一回りも二回りも狭い。その中に三人も入るとギュウギュウになった。
「ひゃあ」
雲助が僕の肩から頭の後ろへ隠れる。
「グッテン。どうしたんだい。俺の部屋へと来るのは珍しいじゃないか」
グッテンは爽やかに笑うと、
「ヨルダンにこの館の図書館を……」
グッテンが言い終わる前に、
「そうだ。グッテンお願いだ。ヨルダンと一緒にハリーの旅行へ行って来てくれないか。俺は仕事があるから行けないんだよ。頼むよ」
コルジンは豪快に言う。
「え? まあいいけど」
僕もまあいいかと思った。一人もいいけどグッテンとなら旅行が楽しいかも知れない。学校で友達がいなかった僕にはその時には新鮮な気持ちが湧いてきた。
「旅行か。私は部屋からあまり出ないから丁度いいかな。色々と体験できそうだしね」
そう言うとグッテンはレタスにかじりついた。
「おチビちゃん。少し待っててくれ。今とびきりの飯を食わせてやるよ」
部屋へと入り、コルジンはそう言うとキッチンへと向かう。
僕とグッテンは小さいテーブルに座り、今後のことを少し話すことにした。この館には興味が永遠に尽きることはないんだね。
「ハリーの部屋の奥の旅行か。あそこにはこの近辺には無い何かがあるって、聞いたことがあるけど、私は旅行なんて生まれて初めてだよ。どんなことが起きるのだろう」
グッテンは興味を少なからず持っているようだった。
「この近辺には無いものだって?」
「ああ。天井から床まで……驚くものばかりだって」
「凄い。きっと夢のようなところなのかな」
僕は興味津津なのさ。
そうこうしていると、コルジンがキッチンから大きい鍋ごと持ってきた。そして、小さいテーブルにズシンと置いた。
「さあ召し上がれ!」
コルジンがそう言って僕の隣に座る。鍋からは野菜だけで出来たクリームシチューのいい匂いがしてきた。
グッテンがレタスを床に置いて身を乗り出す。
どうやら、グッテンら学者たちは料理を知らないのかも。レタス丸ごと食べるし……。
「素晴らしい。これは何て言う料理だ」
「クリームシチューさ」
グッテンは早速皿をキッチンに行って人数分を持ってきたが。後、スプーンが無いことに気付いてまた取って返した。
「じゃんじゃん召し上がれ!」
準備が出来ると微笑んだコルジンが大声を張り上げる。
僕たち三人で料理を食べる。
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