ジョブズとジョニー、アンと再会
―――廃業したタバコ店の2階。美月は『ミーン』によってバンダナで両手を縛られ、バールを振り下ろされそうになっていた。
「田舎生まれの日本人が!」『ミーン』が怒鳴った直後、バールが競技用の槍によって粉砕され転倒。背中までの茶髪に緑色の目を持つ女性、アン・ブックワームが美月に駆け寄り、バンダナを外して床に置く。
「はじめまして、アン・ブックワームさん」「お会いしとうございました、みづきさん」アンは美月に一礼し、「ジョブズと結婚する前、槍投げ選手でした」と小声で恥ずかしそうに言った。
背骨にひびが入った『ミーン』は二人を太い流木で殴ろうとしたが、アンが水筒に入れていたブライトの紅茶を浴び、激痛に悲鳴を上げた。美月は亮介と合流し、アン
は広場へ向かった。
「ジョブズ司令官!」18歳から23歳までの元空軍兵の男性3人がジョブズに呼びかけ、ジョニーも母アンの姿に驚く。「ママ」「アン」ジョニーとジョブズの目から涙があふれ、アンは二人を抱きしめた。
「ジョニー。11歳になったんだ」「うん。直美たちと子どもの転落・死亡事故防止トランポリンを作ってる」アンはジョニーの短髪をなで、ジョブズの髪に唇をつけた。
「アン。お前がコロナにかかった時、ダニエルのケーキ店でお前の好物ブルーベリーケーキを注文し、看護師に渡した」「冷えてておいしかった。ありがとうね」アンはジョブズに栞を渡すと、墓の中へと戻って行った。
ジョブズとジョニーは号泣し続け、オータムとポアロに顔をなめられていた。「再婚はせず、ジョニーを育て上げる」ジョブズがタオルで涙をぬぐいながら言うと「愛妻家!」という声が上がった。
ジョブズが袖に灯台と停泊船が描かれた青い浴衣を亮介に試着させる。家族旅行で横浜に行った時に買ったものらしい。
亮介が黒い帯を締め終えて広場に出ると、直美があんぐりと口を開けているのが
見え、噴き出す。美月はアンの形見で帯に銀色の三日月が描かれた白い浴衣姿で、広場の椅子に座っていた。
勇樹が色鉛筆とペンキを使って二人の浴衣姿をスケッチブックに描き上げた直後、「『子殺し』だ!」とアリゲーターガー・エリックの声が聞こえ、30代の男が直美を2トントラック内に入れるのが見えた。
「直美!」亮介と美月は絶叫し、『子殺し』たちを猛追。ジェームズが黒く長い
糸を噛み切ると、大柄な500匹のオオスズメバチが羽音を立てて男たちを太い毒針で刺し、広場や美容院前でも悲鳴が上がる。
亮介はからっぽの段ボール箱を階段がわりにしてトラックの荷台に乗り、中に入って直美の背中をポンとたたきながら泣き止むのを待つ。
トラックのドアを開け、直美を殴ろうとした30代の男が亮介のどすの利いた声に
バールを落とし退散した。
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