好き

「そ、それじゃあ、脱がすから!」


 ソファから立って、目を閉じた状態の私に向かって瑠奈がそう言う。

 ……いや、脱がすって何? 何を脱がすの?

 私がそう疑問に思っていると、私の下着に手が伸びてき、脱がされそうになる。


「え……」


 私はそう呟き、反射的に後ろに下がってしまった。

 すぐ後ろにはソファがあったから、私はそれに足を引っ掛けて座り込んでしまった。

 瑠奈の手はもう、私のスカートの中には無い。


「なんで逃げるの」


 瑠奈がそう言ってくるけど、当たり前でしょ。逆になんで逃げないと思ったのかを聞かせて欲しい。いきなりスカートの中に手を入れて、下着を脱がそうとして、逃げない方がおかしい。

 いくら好きな人とはいえ……いや、好きな人だからこそ恥ずかしいでしょ。


「他の人は良くて、私じゃだめなの?」


 ……仮にどうしても脱がされるくらいなら、当然他の人なんかより、瑠奈の方がいいに決まってる。

 

「他の人よりは瑠奈がいいけど」


 だから、私はそう答えた。


「じゃあ、なんで……? なんで、私じゃない人に……? そんなに、私の事嫌?」


 私じゃない人に、ってどういうこと? もしかして、私が誰かに脱がされたと思ってる? ……いや、でもどこでそんな勘違いするんだろ。

 

「瑠奈の事好きだよ」

「嘘。だったら私以外にそんなことさせない」

「多分だけど、瑠奈は誤解してる」

「……誤解?」

「そう。私は誰にも脱がされたことなんて無い」


 一応そう言ったけど……全然的はずれなこと言ってたらどうしよう。


「……嘘。さっき、二回目って」

「二回目? ……それは、瑠奈が私の下着を借りることでしょ。昨日だって、私の引き出しから取り出してたし」

「え……も、もしかして、二回目ってそう言う……」


 逆にそれ以外に何があるって言うんだろうか。


「そうだけど」


 私がそう言うと、瑠奈が抱きついてきた。


「じゃあ、私以外の人に脱がされてないってこと?」

「当たり前でしょ」


 そもそも瑠奈にだって、脱がされてないし。

 取り敢えず、よく分からない誤解も解けた事だし、私は瑠奈に向かって言う。


「じゃあ、早く下着取ってきたら?」

「え……あ、それは……」

「何?」

「……う、ううん。と、取ってくるね」


 何故か瑠奈は少し残念そうな顔をしながら、私の部屋に向かった。

 ……今更だけど、瑠奈はなんで私の下着を脱がそうとしたんだろ。……流石にまだキスもしてないのに、そういう事は早いと思うんだけど、瑠奈はしたかったって事なのかな。

 

「れ、れーな……これ、借ります」

「そう。……瑠奈、こっち来て」

「え、う、うん」


 何気に私から瑠奈を呼ぶのって初めてかもしれない。……いつも瑠奈の方から来てくれてたから。

 

 瑠奈が私の隣に座って来てくれた。


「瑠奈、好き」

「……嘘」

「嘘じゃない」


 そう言って私は、瑠奈の唇に自分の唇を重ねた。


「――ッ!?」


 瑠奈がびっくりして、目を大きく開ける。

 私は、唇を瑠奈の唇から離し、言う。


「好きだけど……さっきみたいなのは、取り敢えずこれで我慢して」

「い、今……私、え? あれ……キス……した?」

「した」

「……そ、そう、だよね」


 そう言って瑠奈は顔を真っ赤にさせ、動かなくなってしまった。

 

「瑠奈、もう時間も遅いから、帰った方がいい」

「い、今それ言う!?」

「今時計みたから」

「わ、私分かんない」

「何が?」

「れーなの事……分かんない」


 まぁ、幼馴染でも分からないことくらいはあると思うよ。


「……今日は帰る」

「送って行く」

「……大丈夫。ちょっと、考えたいから」

「そう」

「れーなは、私の事好き?」

「好きって何回も言ってるけど」


 やっと信じてくれたって事でいいかな? まぁ、今回はキスもして、私も頑張ったし。


「……嘘」

「嘘だったらキスなんてしない」

「……じゃあ、もう一回していい?」

「好きにして」


 

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