空気に耐えられない
……食べ終わった。
一番最後に食べ終わったんだけど、私が食べてる間、瑠奈と美菜璃の会話が一回もなかった。
食事中の私に瑠奈と美菜璃が話しかけてくることはあんまりないから、当然その間ずっと無言だった。
まぁ、この前もこんな感じだったんだけどさ。
でもよく考えたら仕方ないか。いくらコミュ力がある、瑠奈や美菜璃でも友達の友達と喋るのって難しいよね。……瑠奈は友達じゃなくて恋人なんだけど、美菜璃はそんなこと知らないし。
「……教室戻る」
食べ終わっても全く喋ろうとしない空気に耐えかねた私はそう言う。
いや、これはもう逃げるしかないでしょ。コミュ力が無い私にはどうすることも出来ない。
「私も」
「私も戻るよ」
私はそんな声が後ろから聞こえた気がしたけど、そのまま止まることなく教室に向かった。
それでも二人は追いかけてくるわけで、私としても別に歩く速さを変えた訳でもないので、普通に追いつかれた。
「れーな」
瑠奈は私の名前を呼んで、手を繋いできた。……いや、なんで? 人前なんだけど? 学校なんだけど?
私は手を離してと伝えるが全然瑠奈が離してくれない。
私はもう諦めて、後で文句を言うことにした。でも、ここには美菜璃もいる訳で……これじゃあまるで私たちが美菜璃を除け者にしてるみたいで嫌だ。
「美菜璃も手繋ぐ?」
「え?」
「は?」
そう思った私は、瑠奈がいるにも関わらず美菜璃に言う。
言ってから後悔した。いや、今までのことを考えるなら瑠奈の前でこんなこと言ったら、また誤解されるだけじゃん。
「……瑠奈がなんか繋いできたから、美菜璃もした方がいいかと思って」
私は他意は無いと意味を込めて、そう言った。
「鈴々菜が繋ぎたいならいいよ」
……やめて。瑠奈の握ってる私の手が痛くなってきてるから。
と言うかこの美菜璃の顔、絶対私の事ツンデレだと思ってるでしょ。さっき言ってたし。違うから、デレた訳じゃないから。
「……いい」
「ふーん」
……素っ気ない態度がまた誤解を招いてる気がする。
と言うか本当に瑠奈の握力が強い。痛いんだけど。……今ここで瑠奈に言い訳したいけど、そんなことしたら美菜璃が不思議に思っちゃう。美菜璃の中で私と瑠奈の仲はただの幼馴染なんだから。……今手を繋いでるのだって、ギリギリのはず。かなり仲がいい幼馴染って事でギリギリ大丈夫なはず。
私は痛い手を我慢して、違うから、と意味を込めて瑠奈と繋いでいる手をギュッギュッとする。
そうしていると瑠奈の握る手が少し弱くなったので、誤解は解けたと思う。
そう安堵していると、教室に着いた。
瑠奈は流石に教室に着くと手を離してくれたので、私は直ぐに自分の席に向かい、うつ伏せになり、目を閉じた。
「美菜璃、起こして」
「食べてすぐ寝ると牛になっちゃうよ?」
「いいから」
「この前の仕返ししていい?」
「だめ」
「えー、じゃあ頭撫でさせて」
……いや、何を言ってるんだろう。
「だめに決まってるでしょ」
「えー、鈴々菜がこんなふうになるの珍しいから撫でさせてよ。そしたらこの前の仕返しはしないから」
……なんかこうしてると、ほんとに眠くなってしたし、なんかもういい気がしてきた。それぐらいなら大丈夫……じゃない。瑠奈に見られたらまた誤解されるでしょ! ただでさえ今日は一回誤解されるようなことしちゃってるんだから。
「だめ」
「えー」
「えー、じゃなくて、だめだから」
「じゃあ、髪といとくね」
「勝手にしたら」
別に美菜璃が美菜璃の髪をどうしようと、私には関係ない。
そう思い、私は眠りについた。
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