古典的だけど読み易さ抜群の異世界転生もの

子供の頃に初めてファンタジー小説を読み始めた時の、ワクワク感を思い出させてくれる作品です。
展開やストーリーは王道風だけど、昨今の流行を押さえて読み易く綴られてる文章力と言いますか。SNSの延長のようなオノマトペや「!!」による過度表現も殆どないので、古典小説とラノベの丁度良い塩梅で作られていると感じました。
だから読み易くストーリーは後を引くと言う絶妙さです。
自分が⚪︎⚪︎したいから領地を発展させよう前世知識だ!じゃなく、まず主人公が領地を好きになり為政者として生きよう、だから⚪︎⚪︎しよう、と言う話の流れが凄く好きです。

キャラ描写も非常に上手いバランスを取ってると思いました。
読むの断念&ブクマ外すくらい、読むのにストレス掛かる要素として、分かり易い馬鹿なキャラって居ませんか。
多分異世界ものを読んでいて度々起こる、話の通じない馬鹿との対峙。フレーバーとは言えそんな馬鹿を成敗して見直される主人公、俺TUEEEしてる主人公見てうんざりしませんか。
高尚読者ぶりたい訳では無いですが、小説を読む以上、主人公には感情移入して読みたい読者は多いと思います。
出来れば主人公が好きになれれば更に作品は面白いです。でもだからこそ、主人公やヒロイン、主要キャラ達に底の浅さを感じるとガッカリする事ありませんか?自分はします。
世界観がファンタジーで何でもありでも、読者が生きてる人間である以上、人間関係もまるでファンタジーな話読んでると途端に内容すっからかんに見えて読むの断念してしまう人にこそ読んで欲しいです。

色々言われちゃってるヒロインに関しては、自分は全くストレスも苛立ちも感じませんでした。逆に子供の頃から主人公に嫉妬を向ける位、現実を"理解"出来てしまうくらい頭が良いのは可哀想だなと思いましたし、そこから努力した真面目な所は日本人的には応援したくなっちゃいました。
自分が立とうと悪戦苦闘してる所も、子供なりの視野の狭さと高位貴族の矜持を思えば愛すべきフレーバーだと思いました。
読者的メタ発言で言うなら、ヒロインが本質的に我儘な態度を見せるのは主人公だけですし。
変に小賢しく無く根は真面目で真っ直ぐなのは、子供ならば寧ろ美点であり自分的には加点ポイントでした。
北部最大閥で寄親と寄子の子供じゃ、外部からの軋轢やプレッシャー、入ってくる情報や現実の見え方も全く違うでしょうし、まして相手は後継教育受けてる訳じゃなさそうな令嬢ですし。
これで主人公が将来立場を捨てて冒険者になるなら兎も角、為政者になると言ってますから柵も義務も受け入れて欲しいです。
主人公が抑圧されない最強物は爽快でしょうが、最強だからこそ義務を忘れないのもまた爽快です。

今後の展開はまだまだ読めませんが、続きがとっても楽しみで更新が待ち遠しいです。
男爵領が滅ぼされて官民全滅とかじゃなければ、このまま初志貫徹して"現男爵領"を栄えさせても良いですし、女王と懐刀な王配なんていう欲張りバリューセットも捨てがたい。

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