第37話
おじいちゃんの施設に手紙を置いてから3ヶ月ほど、長期の派遣があった。
その派遣が終わるころ、ハッチだと思われるアカウントがTwitterでつぶやいた。
すぐに実家へ帰った。
というよりは、呟いてから気づくのに1ヶ月かかってしまった。
つぶやかれてから実家に帰ると、クラウンは止まっていたが父親とされる人はいなかった。
仏壇には、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんの写真があった。
言葉を失って、ただただ仏壇の前に座り込んだ。
それから、どれくらい時間が過ぎたのかわからない。
最後に見た満タンだったはずのスマートフォンの電池は切れていた。
玄関が空いた音がした。
おじさんだった。
「広治か。いつ帰ってきた。」
「わからないです」
「そうか。電気つけよう」
「ごめんなさい。すいません。申し訳ございません」
ただただ涙が溢れて、ただただ謝った。
テーブルの上に置いてあった新幹線の切符が三日前の夕方だったのを見て、
「三日間もそのままでいたのか」
「すいません」
ただただ泣いていた。
「わかった。落ち着こう。お風呂入って、何か口に入れよう。コーヒーでも飲もう」
お風呂に入って、コーヒーを飲んで、僕は長い間寝てしまったようだった。
目を覚ますとおじさんがいた。
「起きたか」
「何があったのですか」
「君が最後におじいちゃん、おばあちゃんのところに行ってからすぐに二人とも亡くなったんだ。最後にはお母さんも俺も立ち会えた。苦しそうでなく、眠るようにおじいちゃんは亡くなったよ。その一週間後かな、おばあちゃんも心臓発作で亡くなったよ。あっという間で、本人も亡くなったことを知らないんじゃないかな。四十九日法要が終わって、相続の問題も、色々な事が一段落したんだ。そして、その、ちょうど1ヶ月前に、お母さんが亡くなったんだ。動脈瘤の破裂で、あっという間に。長いこと病院にかかっていたようだね。忙しかったのか、血圧の薬、全然飲んでなかったんだね」
「動脈瘤、知らなかったです」
「そうか」
「父親とされる人はどうしたんですか」
「お母さんが亡くなって、初七日が済んで、僕や会社の顧問弁護士が集まって、相続に関しての話合いが行われたんだ。それで、相続は全て僕と広治君に、とすでに遺言書があったから、になるんだけど、そのことでお父さんは激怒して、裁判を起こそうとしたんだ。でも、遺言書のことや、籍を入れてないことを考えると、無理だと知ったんだろうね。貯金を何百万か引き出して、いなくなってしまったんだ。」
「色々と申し訳ございません。謝ることしかできないです。」
「あとはこの家や土地をどうするか、などはゆっくり決めよう」
おじさんと話をし終わったら、ハッチにお礼に行こうと、蜂旗ミートに行くことにした。
「こんにちは」
「広治君、大変だったね」
「ご迷惑をおかけしていたら申し訳ございません。ハッチはいますか?」
「来週には戻って来るよ」
「わかりました。帰ってきたら、これ、僕の番号なので渡してください。しばらくこっちにいます。急いでないので帰って来たら連絡をお願いします」
しばらく、家の片付けをすることにした。
父親とされる人のものは大体持って出たようで、服もほとんどなかった。
持って行ったお金もほとんど個人のお金だったようで、お母さんのお金は手つかずだった。
不動産会社勤務時代の通帳に生前、移していたようだ。
お母さんの服もモノも、捨てることにした。
家も土地も売ることにした、というか、そのへんはおじさんに任せた。
色々なモノを整理していると、僕が、過去にもらった賞状などを、保管している引き出しがあった。
そこに僕宛の手紙があった。
すぐには開けられず僕は片付けを続けた。
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