0-3 オオカミたちの集落

それから俺は、オオカミの仲間たちがいるという場所に連れて行かれることになった。


「つーかお前、よく生きてたな!身体ボロボロなのに。」

どうやら俺...もといフォレストオオカミは、池にはまって何日も溺れていたらしい。

ところどころ肉が腐り溶け落ちていて、骨が見えているところもある。

それゆえ、ゾンビの名を連ねるようになったということだろう。


そこをたまたま通りかかった彼に助けられたということだ。

フォレストオオカミは世界各地の森を放浪する魔物の種族らしいが、俺の身体の元の持ち主と彼は所属する群れが違い、面識はなかったようだ。


...こういういかにも肉食な動物で『別の群れ』というと、縄張り争いとかをバチバチするものなんじゃないかと思っていたが、今のところ彼は友好的に見える。

いいね、助け合い。

でもこれがゲームのシナリオなんじゃないかと思うと、感動が薄れる。


「よし、ついたぞ!」


そこには入り口があった。

少し太い木の枝を草糸で縛った、それこそ人間の原始的な部族が作るような簡易的な門が。


さらにその両横には無数の石がずらっと並べられており...これは憶測だが、全体的に見ると円を描くような形をしている気がする。

この石が住処の境目を表している...ということだろうか。


動物にしてはやけに文明的なそれらが、俺の中の「これゲーム説」をひそかに補強した。


「パーパおかえりー!」

門をくぐるとすぐさま、小さなオオカミの子供が3匹寄ってきた。


「おおぉ、いい子にしてたか?」

パーパが子供たちにきく。


「うん!」


「タウロがまたサブロをいじめてたよ」

気の強そうな子オオカミが告げ口する。


「本当なのか?」


「チッ...」

一匹の子オオカミが去っていった。


それから一匹の子オオカミがこちらに近づいてきた。


「どうもはじめまして、ジージョといいます。パーパがいつもお世話になっております。」

子オオカミが俺に挨拶をしてきた。


いえいえこちらこそ...

俺は口をパクパクさせた。子オオカミは不審な顔をした。


「ぱーぱこのおじさんだれえ?」


オオカミ(以降は俺もパーパと呼ぶことにする)は俺に「見苦しいところを見せてすまない」と一言謝ってから、俺が池に溺れていたということ、そして現在はなぜだか喋れない状況なのだということを子供たちに説明した。

俺にも「私の家族だ」と親切に説明してくれた。見ればわかる。


「へえー!おじさんおよげないんだ!ぼくとおなじだ!よろしくね!」


「ふん、突然喋れなくなるなんてありえるわけないじゃない!(そうだったんですね、よろしくお願いします)」


「おいジージョ!...はあ。まあ、ゆっくりしていってく...」


「おい!!!人間がいるぞ!!捕えろ!!!!!!」


今いる入り口付近よりもずっと奥の方から、怒号とも言えるような大きな咆哮が飛んだ。


「お前たちは家に隠れていろ」

パーパは子供たちにそう告げ、声の方向へ向かっていった。


俺もつられて声の方向へ走っていく。

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