学校編

テイク1 始まる地獄

「ふわああああああ」


 欠伸をしながら机に伏せて寝ていた嗣は上体を起こして起床した。

 現在時刻は、九時二十五分。まだ授業の途中で黒板に男子教師が数式を書いている所である。とは言ってももう後五分ほどで授業は終わりだ。

 

 よし、これから自分の世界が始まる。嗣はそう信じてやまない。


「好きです」

 横の席の一番嗣に近い席の女子生徒、真鍋由香(まなべゆか)が第一声、嗣にそう甘い言葉を送った。

「えへ?」


 授業中にそんなこと言われるとは思わず、嗣の表情が緩む。

 よくよく周りにいる女子にも視線を移してみれば全員が嗣を真っすぐに見つめていた。他の男など見向きもしない。皆が授業中である事を忘れてしまっている。男性教師はお手上げ状態だ。何言っても誰も聞かない。男子は嫉妬に狂い女子は嗣の事に熱中だ。

 おおお、神の影響力が半端でない事を実感した。嗣にとってもとても嬉しい事なのである。


「私も好きです」

「私も!」

「待って私が!」

「うへへ、皆落ち着いて~」

 

 もうちょっとで授業も終わりだと言うのに、女子は我慢出来なかったようで、嗣を好きになった女子生徒たちが一斉に押し寄せた。他の男子生徒は嗣を一心に睨みつけ、張本人である嗣はそんな事お構いなしで鼻の下を伸ばしきりにやける。

 女性全員、目がハートだ。それだけ嗣を好きになってしまっている証拠。

 神の言う効果は偉大なり。

 嗣にだけ集まった視線————。


「「「「付き合って下さい!」」」」


【パーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン】

 

 そして嗣は綺麗に破裂して死亡した。


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