街の片隅の吸血鬼

織風 羊

第1話

  


 静かな夜。 


街は眠りについている。


喧騒の時間も終わり

寒い夜のベッドの中。


一人眠る夜は

自分の肌の暖かさで自分を温める。


耳元で囁く声は

はっきりしなく

暖かな布団を跳ね除ける勇気もない。


目は覚めつつあるが起きる気にもなれない真夜中。


それにしても

この囁き声。


なんとかしようと腕だけを布団から出して振り払おうとする。


然し

腕を振った時にだけ声はなくなり

やがてまた

そっと耳元へ近づいてくる声に


「やかましいわ! いい加減にしろ!」


と怒鳴りつけると共に大きく腕を振ると


「痛て」



一人暮らしのこの部屋で男の声?


「誰!」


と真夜中など考えずに大声で叫んでしまう。


その声に反応して


「起こしてしまいました。済みません」


と答える男の声。


その方向を見ると誰も居ない。


「貴女を起こしてしまおうとは思っておりませんでした。本当に済みません」


「何処?」


と尋ねると、


「失礼しました、貴女の枕元です」


よく見ると蚊が一匹。

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