第8話 ソロ最初の壁

ガンさんのアドバイス通り一層でスライムを五匹追加で倒した俺は二層へと向かう。一層からの階段を降り、二層へと入る地点でしっかりと周りに敵がいないことを確認した後、歩を進めた俺は戦闘音を耳にする。


「右側でやってんのか。なら俺は左に行こう。」


十字路の右側から戦闘音が聞こえたため反対のルートを選ぶ。そうした方が獲物の取り合いになったり、お互いの邪魔をしたりしなくて済むからだ。





「グギャッ」


二層探索開始から五分ほど経ったときだろう。正面の通路からそいつは姿を現す。身長120センチほどの緑色の体躯に腰布、手にはこん棒。間違いない二層で活動する魔物、ゴブリンだ。


ゴブリンはスライムとは違い俺を見つけた途端に襲いかかってくると考えていいだろう。なら先手は譲る。焦って攻撃するより冷静に、体格、身体能力では勝ってるんだから無理はしなくていい。落ち着いて相手の動きを観察しろ。


「グギャッ!!」


俺が自分にそう言い聞かせてる間にゴブリンが一気に距離を詰めて来る。ここまでは想定内、次はこん棒の振り方次第だ。横に振ってくるなら籠手で防ぐ、縦に振ってくるなら避けよう。


こっちに向かって走って来ていたゴブリンが俺の少し手前でジャンプする。そしてこん棒を振り上げたのを見て即座に俺は右へと回避、ゴブリンがこん棒を叩きつけるもそこにはもう俺はいない。


「おらぁ!」


その致命的な隙に、前傾姿勢になって空いた腹に左脚で蹴りを叩き込んでやった。



「想定してたほどのダメージはなさそうだな。」


一連の動きは宿でシミュレーションしてきただけあって結構スムーズにできたが想定外だったことが一つ、左脚での蹴りだ。相手の攻撃に合わせて回り込み、隙を狙ったにしては威力が出ていない。その証拠に一撃で仕留めるつもりだったゴブリンは既に起き上がろうとしている。


こりゃイメージだけが先行して身体が追い付いてないのが原因だな。現にゴブリンを蹴った後思った以上に重くてちょっとバランス崩したし。体幹がなかったせいで全然上手く蹴れなかったっぽい。まだ左に避けて利き足で蹴った方が良かったかもしれんけど、まだ初心者だし慣れないことはしないでおくか。


ゴブリンへの追撃は避け、距離を取り様子を窺う。ゴブリンも少し警戒しているようで一気に距離を詰めては来ない。ジリジリと距離を詰めてくるゴブリンに対して、俺は防御しやすい姿勢を取りながら目を合わせ続ける。あくまでも防御優先、狙いはカウンター。


お互いに睨み合いながらもジリジリと距離が縮まり、5メートルを切ったあたりでもう一度ゴブリンが仕掛けてくる。


「グギャッ!」


高さを出すために思い切り跳んだ前回とは違い、今回は前進することを目的とした低空のジャンプ。右手に持ったこん棒を横に薙ぐようにして近づいてきた。対する俺もゴブリンがこん棒を横に構えて動いたのを見て距離を詰める。そして、振られるこん棒が最高速度に達する前に籠手に覆われた左手を盾にし、こん棒に向かって一気に突っ込んだ。


力が入りきっていない状態のこん棒を左手で弾くと、ゴブリンはこん棒を手放しはしなかったものの大きく体勢を崩す。そのがら空きになった胸に拳を叩き込んで床に叩きつけた。


「ギャッ!?」


元から籠手の装飾としてついてるとげが刺さりはしたが浅い。さっきは想定と違う状況だったから追撃は避けたが今回は想定通り。躊躇うことなく右の拳から鉄のとげを生み出し、再度ゴブリンの胸を殴りつける。それがとどめとなりゴブリンは少し痙攣した後粒子となって消えていく。


「人型の魔物も考えもんだなこりゃ......。」


一層のスライムは情に訴えかけてきたけど二層はまた違う方向性でメンタル攻撃してくるな。見た目はどう見ても魔物だが動きや死ぬ前の挙動なんかは完全に人間のそれだ。いくら相手が凶暴だとはいえ早めに割り切らんとこの先やっていけそうにもない。


「幸い倒すのは少し余裕があったし一体のやつを狙ってもう何戦かしてみよう。」




目の前でうつ伏せの状態で消えていくゴブリンを眺めながら自分の腕に痛みなどがないかを確認する。今倒したゴブリンで合計五体。既に四体倒してるのもあってポケットが魔石でパンパンになろうとしていた。


「五体も戦うとだいぶスムーズに倒せるようになるな。苦戦することも無くなったし、慎重に二体同時行ってみるか。」


慣れてきたからか最初のように苦戦することも無く、身体能力も若干ではあるが自分で分かるくらいに上昇がみられる。そこで今までは避けていた二体一緒に行動しているゴブリンと戦ってみることにする。


正直連戦なら負ける気はしないけど二体同時になるとどれだけ戦えるか分からん。何かあったときにすぐ退けるように、挟まれたり回り込まれたりしないように立ち回ろう。




「お、いたいた。」


単独行動していたゴブリンを追加で二体倒した後、二体一緒に行動しているゴブリンを発見する。


向こうに歩いて行ってるな。こっちには全く気づいてない。……奇襲してみるか?そうだな、そうしてみよう。いきなり二体同時に戦うより二体いたところを一体減らして戦い始める段階を一応挟んでおこう。何の効果があるのかは知らんが。


ペアのゴブリンが通路を左に曲がって見えなくなったところで、出来るだけ足音を立てないようにして一気に近づく。少し顔を覗かせて曲がった先を確認するとゴブリンたちはまだ近くにいたがこちらには気づいていない様子。ちょうど二体ともあちらを向いているので俺は少し後ろを歩いているゴブリンに狙いを定めて一気に飛び出した。


こちらに気づいてないといっても油断せず足音を立てないように、それでいて素早くゴブリンの背後を取る。守るもののないそのがら空きの背中にとげの生えた拳を思い切り叩き込んでやった。


「ギャッ!?」


背後から確実に心臓を貫き仕留める。


「グギャ?ギャギャッ!?」


もう一体が相方がやられたことに気づくも動揺からか動けないでいる。その隙を突いて頭を貫きこちらも確実に倒した。




ゴブリン一体と戦うのに最初は手間取ったから二体ならかなり苦戦するかもと思いながらの戦いだったけど終わってみれば何のことはない。奇襲を仕掛けてから二体目のゴブリンを仕留めるまでにかかった時間はたった数秒ほど。初めてゴブリン一体を相手にした時の方が数倍、いやもっとかかっているだろう。それにゴブリン一体を正面から相手にするよりずっと精神的に楽だった。


「戦いの途中に焦ったりするとあんな大きい隙ができるんだな。」


正直奇襲で一体倒して残った一体と正面から戦うことになると思ってたから思ったより手応えがない。もう一体が動揺して俺が攻撃するまでほとんど動けてなかったのが本当に衝撃的だったわ。


「常に冷静に、何があっても動揺しないってのは難しいけどずっと意識しとこう。」


あの隙を突いて攻撃したから分かる。俺みたいな新米冒険者があんな隙見せたら即死だわ。いや、ベテランでも危ないかもしれん。そしてもう一つ分かったことがある。奇襲めっちゃ強い。気づかれなければほぼ確実に一体倒せて周りの動揺誘えるって作戦として優秀すぎる。


「けど相手も同じ条件だからなぁ......。」


奇襲されたら対処できる自信ねえ......。されんようにしっかり警戒するしかないか。なんかどんどんやること増えてんな。


心の中では愚痴を言いながらも周りを警戒してゴブリン二体のペアを探す。今回は少し歩くとペアのゴブリンを見つけることができた。俺の視線の先でこちらに背を向けて歩いている。奇襲は......たぶんできる。できるけどあれを繰り返して強くなれるとは思えない。


やるか、真っ正直から。別に危ない橋を渡るのが好きな訳じゃない。むしろ俺は慎重派だ。相手の情報を入手して作戦をしっかり立てて挑むほどには。もちろんゴブリン二体を正面から相手取ったときの作戦も考えてはいる。でもゴブリン一体を相手にするのとは違う。失敗したら殺されるかもしれない。でも行こう。窮地に嬉々として飛び込んでいく冒険者になるのは御免だ。でも、ゴブリン二体が窮地になるような冒険者になるのはもっと御免だ。


覚悟を決め堂々とゴブリンたちの元へと向かう。気配も足音ももう隠さない。目線の先では俺に気づいたゴブリンたちが既に臨戦態勢へと入っている。数で負けている以上後手は不利。ゴブリンたちが距離を詰めてくる前にこっちから一気に距離を詰めていった。




ゴブリンが横に並んでいる以上前から攻めるのは得策じゃない。なら横に展開しよう。相手は両方とも右利きだから右から一気に叩く!


俺ほ相手の利き手を確認して右へと展開する。こうすることでもしこん棒を受けたとしても俺を追いかけるように受けることになり、左に展開して正面からこん棒を受けるよりも大きく衝撃を減らすことができる。


通路がそこまで広くないため大きく距離を取ることは出来ないが相手のこん棒が用意に届くほど狭くもない。だからこそこちらが素早く、迷いなく動けば合わせて動こうとする。しかし、上手く連携が取れずに互いの動きを阻害していた。


「広くない通路で複数体いながらバラバラに俺を追いかけようとしたらそりゃそうなるわな。」


もし、ここでしっかり俺の動きについてくるようだったら鉄球でも投げて牽制するつもりだったがその必要はなさそうだ。


バラバラに動こうとして身体がぶつかり合いゴブリンたちが俺から意識を逸らしたタイミングを狙って回り込み、ゴブリンたちが一つに重なった瞬間一気に突っ込んだ。


「ゲギャ!?」


一気に接近する俺にやっとゴブリンが気づくがもう遅い。俺は右脚でゴブリンの横っ腹を蹴っ飛ばしてやった。少しずつ戦いが上達してきたからか少し浮いて飛んでいくゴブリン。


「ギャ!?」


目の前にいたゴブリンが吹き飛ばされて驚いたもう一体のゴブリンが大きな隙を作る。だが、俺も勢いよくゴブリンを蹴飛ばした姿勢のためその隙を突くことは叶わない。だから、


「ちょっと大人しくしててもらうぜ。」


右手のとげを細く、長く伸ばして目の前のゴブリンに突き刺す。とげは肩に刺さりゴブリンの動きを止めた。


できれば頭か胸を貫いて仕留めたかったが仕方ない。あくまでこの攻撃は足止め、倒せるならそれに越したことはないが目的を達成しただけで上出来だろ。


肩を押さえて転げ回るゴブリンは無視して先ほど蹴飛ばしたゴブリンの様子を確認する。吹き飛ばされたゴブリンはまだ体勢を立て直す途中、まだこっちのことまで意識は回ってないはず。倒せる、そう確信すると俺は思い切り地面を蹴った。


「ッ!?」


防御する姿勢に入ることすらさせず胸を貫く、が倒した余韻に浸る時間はない。すぐさま胸からとげを抜き、残ったゴブリンの元へと戻る。先ほど肩を貫いたゴブリンは未だに落としたこん棒を拾わず左肩を押さえている。こちらも先ほど同様一気に距離を詰めて今度は頭を貫いた。




「持ちきれんなこれ。」


倒した二体のゴブリンの魔石を持ち、ダンジョンの通路の壁に寄りかかりながらそう呟く。まだポケットには少しスペースがあるがこんなゴツゴツしたものをポケットパンパンにして戦うと動き辛い上に脚に刺さったりする危険もあるのでもったいないが通路脇に捨てることにした。


そして通路に寄りかかったまま周りを警戒しながらさっきの戦闘について振り返る。


俺が気にかかったのはゴブリンを倒す順番だった。一体目を吹き飛ばして二体目も行動不能にできたのは上出来だったと思う。でもその後の一体目はの追撃がかなりギリギリ間に合った気がする。正直不意打ちが決まりはしたけどあと少し追撃が遅れてれば完全に立て直されてたし、そうなった場合最悪挟まれる可能性もあったんだよな。


「あのタイミングで二体同時に倒そうとしたのは欲張りだったか。」


数で負けてる以上二体目のゴブリンに確実にとどめ刺して頭数揃える方がだいぶ安全だったな。一対一になれば負けることはないだろうし。実践して分かった。少し無茶してでも相手を一気に全滅させるより、一体ずつ安全に確実に離脱させた方が有効だわ。これから集団の敵と戦うときはこれ意識しとこ。




宿でのイメージトレーニングと実戦の差を実感しながら二階層でゴブリンと何度か戦いながらさっき意識したことを身体に馴染ませていく。魔石はもう拾えないから捨てなければならなかったが、魔石以上の価値のある経験が得られたのではないだろうか。


「もう結構倒したな。二十体くらい倒したか?」


倒した数をいちいち覚えてないし魔石も途中から拾ってないから微妙だが、そのくらいは倒した気がする。今ならゴブリン二体と正面で戦っても勝てるくらいには戦えるようになった気はするがまあやらない。油断は良くない。さてと、ゴブリンとの戦いも一段落ことだし疲れて動きが鈍る前に帰ろうとは思うんだが一つやりたいことが残ってる。今、俺が持ってる三層の情報を実戦と照らし合わせておきたい。本当ならやる気はなかったんだけどゴブリン二体と戦ったときにイメージトレーニングだけじゃ不安が残ることが分かったし、当然ではあるんだけど。



二層の階段を降り三層へと入る。三層も二層と同じ人型の魔物だから追いかけて来ることを考えて階段から離れすぎないようにしながらを探す。するとまだ階段を目視できるような位置でその魔物達を見つけたのだった。


「五体か......。多めなのを見つけちまったなこりゃ。」


情報だと三体から六体で行動するらしいから五体はかなり多い方だ。そしてそれだけ多ければ周りを見る役もいるようで......まあ奴らに関してはそこはあまり関係なかったかもしれんが少し身体を覗かせただけで奇襲する間もなく気づかれる。ゴブリンより少しだけ背が高く、犬の特徴を持ちながらも二足歩行をする人型の魔物、コボルト。たぶん俺が気づかれたのは嗅覚が鋭いからとかそんな理由だろ。剣を持ったコボルトが一体にこん棒を持ったが二体がこっちに走って来ていて、そしてボウガンを持ったコボルト二体は俺に照準を合わせ......!?


咄嗟に身を引いた少し後、さっきまで俺がいた場所付近を二本の矢が通過し、壁に当たった。


あっっっぶねえ!!!距離あったから余裕もって避けれたけどあの武器そんな精度いいのかよ!?15メートルくらいは離れてたろ!?油断してたら当たるとこだったぞ!?


聞いてはいたが初めて見るボウガンという武器に内心恨み言を言いながら戦闘態勢に入る。その直後三体のコボルトが姿を現す。


「あの距離をこの時間で詰めて来るか。ゴブリンよりだいぶ動けるタイプか?」


相手は三体で通過はさすがに塞がってるような状態だからゴブリンに取ったような作戦は使えねえな。そういうときはっ......!マジかよ!?


さらにその後ろから二体のコボルトが合流する。もちろん手にはボウガン。


......無理だこれ。撤退しよう。


俺は手から金属の玉を生成するとそれを薄く伸ばして身体全体を優に隠せるほど巨大な長方形の板にする。それを右手の籠手にくっつけると盾のようにして突きだし、そのまま階段の入り口まで下がり、板を消して階段を駆け上がった。




「無理無理無理無理、ありゃちゃんとした武器か魔法を持った人らがやっと一人で戦っていいレベルだわ。イメージトレーニングとか関係ねえ、さっきのはもし何も考えずに突っ込んで行ってたら確実に死んでた。」


二層で出会うゴブリンを倒しながら出口を目指す。今回三層に行っといてよかったな。ゴブリンめっちゃ倒した後だから身体能力で上回る算段立ててたけど全然ダメだった。三体の前衛コボルトは倒せないことはなさそうだったけど想像以上に後衛のボウガンコボルトが厄介すぎる。俺の魔法と武器じゃ一人で倒すのはちょっとキツいかもしれん。


さすがにソロ最初の壁と言われるだけあって一人で攻略する難易度が高く、既に攻略に暗雲が立ち込める。


「どっかで仲間探すのが早いか......。帰りにギルド寄るし仲間募集の掲示板見てみよう......。」


二層を抜けて一層に帰って来ると俯いてとぼとぼ歩いてしまう。正直一人でもう少し頑張れると思ってたんだよな。二層は普通に突破できたし。三層になって一気に難易度が、おっとごめんよスライム、どいておくれ。そう、三層になって一気に難易度が上がったんだよ。一対一なら二層と一緒で苦戦することはないと思うけど五体は無理。捌ききれん。......なんでついてくんのお前。


人が落ち込んでいるというのに帰り道のど真ん中に堂々と居座り、蹴りそうになったのを避けて横を通った後、今俺の後ろをぴょんぴょん跳ねながらついて来ているこのスライムどうしてやろうか。


「何が目的なんだお前は。」


スライムをむんずと掴み尋問を開始する。ぷるぷると抗議する容疑者。そのぽよぽよしたボディを揉んでいるだけで少し気分が落ち着くのはなぜだろうか。


「ほら帰った帰った。」


地面に置いてぺちぺち叩いてやると壁に向かって跳ねて行き壁際でぼけーっとし始める。もういいやあいつ。ほっとこう。つーか何で追いかけて来たりぼけーっとしたりスライムによって違うんだろうな。あいつに至っては両方だし。


スライムの不思議について考えながら道中のスライムは無視してダンジョンを脱出する。だいぶ長いことダンジョンにいたのか外は日が暮れかけていた。


「なんかどっと疲れたし、腹減ったな。」


緊張が解けたからか一気に疲労感と空腹感に襲われる。さっさと飯食ってギルド行ってガンさんからアドバイス貰おう。




ダンジョン前に出ていた屋台で買い食いして腹を満たした後はギルドで魔石を換金する。受付嬢からお金を受け取った俺は掲示板を確認しに向かった。


「遠距離の魔法使える人の募集が多いな......」


掲示板には遠距離の魔法を使える人を募集している張り紙が多かった。けど分かるなあ、絶対強いもんな。俺も誰か一人仲間に加えるとしたら遠距離で魔法使って攻撃できる人がいい。それくらい近接戦闘はリスクがあるってさっき実感したし。


「ほんで近接の前衛の募集はなしと。」


まあ、そりゃそうだ。冒険者になるならまず近接タイプの前衛系の武器の人が多いだろうし俺もそうだが、そういう人たちはあんまり前衛をもう一人欲しいとは思わんだろう。そして魔法を使える人はまず余ってない。あまり期待はしてなかったけど近接タイプの前衛がピンポイントで募集かかることはやはり珍しいのだろう。そして俺みたいなソロ冒険者ですぐ埋まってしまうと。はあ......。


とぼとぼとギルドを出て向かいの雑貨屋に入る。


「らっしゃい!ってアズマか。どうした?そんなしんみりした顔して。」


「二層は行けたけど三層で詰んじまったよ......。正直一人じゃいけそうなねえ......。」


そう答えるとガンさんは顎に手をやって考えごとを始める。


「パーティーねぇ。今のアズマに欲しい相方はやっぱ魔h『お前パーティーメンバー探してんのか?』ん?」


パーティーメンバーのオススメを教えてくれようとしていたガンさんの言葉を遮ってとある男が人懐っこい笑みを浮かべて話しかけてきた。


身長は俺より高い、180はあるな。体格は細身ではなく太ってもいなそうで青い髪をしている。


別に何か特別目を引く特徴があるわけでもない。しかし、俺はこの男を見たとたんに既視感に襲われる。


どこかで会ったか?いやアカシに来て話した人は少ない。言葉を交わしたなら覚えているはずだ。


考えても考えても出すことのできないその答えを、男は衝撃の言葉と共に口にする。


「実は今日の昼頃になこの雑貨屋で商品を見てたんだが、店長とお前の会話が耳に入ってな!その後考え込む姿を見てビビっときたわけよ!俺の名前はシヴ。俺とパーティー組んでくれねえか?」

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