第46話 思わぬ助け?舟
そして、思わぬところから助け舟が出てきた。
「いけません、旦那様」
「瀬戸!?」
瀬戸はリヒトの背後に立っていた。瀬戸はいつもと変わらない表情だが、雰囲気はあからさまに怒っていた。
何故ここまでリヒトが怒っているのかつむぎには分からなかったが、リヒトには心当たりがあったらしい。非常に焦った様子である。
瀬戸はリヒトを逃すまいとじっと睨むように見張っていた。
「術師の仕事で忙しいからと金城家の仕事をほったらかしにしているでしょう」
「そ、それは。ほら、本当に忙しかったから」
「ええ承知しております。ですから代理で仕事しておりました」
「さすが瀬戸だな!瀬戸に仕事任せておけば間違いない」
「あとは当主である旦那様のサインさえあれば終わります」
「え」
「簡単なお仕事ですよ?旦那様の部屋いっぱいにたまった決裁に目を通してサインするだけなのですから」
「え」
「安心してください。書類に不備は一切ございませんからすぐ終わります」
瀬戸の圧力が半端ない。瀬戸がこれほど怒るということは本当に溜まりに溜まっているのだろう。
「はははっ!さすが瀬戸だね」
「朱音さん、笑い事じゃないです」
「ちゃんとお休みあげるから、仕事頑張るんだな」
「それ休みじゃないですって」
リヒトは深くて重いため息をついた。つむぎはさすがにリヒトが可哀想に思えてきた。
「あ、あの!リヒト様。私にできることは手伝いますから」
きっとリヒトの味方はこの場にはつむぎしかいないだろう。優しいつむぎにリヒトは胸をきゅんとさせた。
せっかくつむぎが心配してくれているのだからここは思いっきり甘えよう。リヒトはそう企んで、つむぎの髪に頬ずりした。
「うん」
「ですから……その……」
「うん?」
つむぎは少し背伸びして、リヒトの耳元で囁いた。
「早く終わったら、新婚旅行、行きましょう?」
緊張して少し声が震えてしまった。つむぎは恥ずかしくなって顔を真っ赤にして俯いた。
「ぐっ」
「リヒト様!?」
リヒトは急に倒れ込んだ。耳元で可愛く囁くだけでも可愛いのに、顔を赤くして照れながら言うのだからその威力は倍増だった。
あまりに強烈なつむぎの可愛さにリヒトの心臓は持ちそうにもない。
「やっぱり俺の花嫁は可愛すぎる」
リヒトが小さく呟いた。しかしその声はつむぎには聞こえなかったようである。
「大丈夫ですか!?」
つむぎは心配そうにリヒトを支えた。そんなつむぎもいじらしくて、さらにリヒトを追い詰めていた。
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