序章③

 夢を見た。

 炎の中で、ユーゴを抱きしめて震えるリュカにいさまの夢。

「どうして」

「おまえだけは、たすけてやるから。」

「賢者の力なんて、いらなかったのに!」

 なかないで、なかないで。

 必死に手を伸ばすのに、にいさまには届かない。泣かないでほしい。笑ってほしいのに。動かない足をどうにか動かして、彼を抱きしめてやりたいのに。なぜだか、わたしの身体は透けてしまって、彼に届きやしないのだ。それが悔しくて、悲しくて、涙が枯れるくらい泣いて、それで、それで。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る