第9話出会いは魔術師 (5)

マレット②


 少女からの誘いの言葉に思わず口を閉ざした。『お茶をする』の意味が分からず、どう答えれば良いのかわからない。そのため、沈黙を続けてしまった。それを肯定と捉えられてしまった。そのまま『カフェ』とやらに連れ込まれた。


 『カフェ』とやらは、広々としていて落ち着きのある場所だった。メニューを見たが、何一つ分からない。

 とりあえず『ミルクティー』と『ショートケーキ』を頼んだが、どんなものかよく分からない。が、とりあえず食べてみた。

 5万年ぶりの食事だった。久しぶりで、しかも初めて食べるもの。しかし、口にしてみて驚いてしまった。

まず『ミルクティー』という飲み物だが、スッキリした香りに爽やかな味わい。『シュガー』とやらを入れると、まろやかさが際立ち魔法のように変化する。

次に『ショートケーキ』を食べてみたが、言葉で表せないぐらいの美味しさだ。口に入れた瞬間に広がる甘さ、一口食べても舌に残る甘さに、脳が欲しがる濃厚な甘さ。多くの甘さが一つの食べ物に入っている。俺が食べてきた中で一番美味しいかもしれない。食べる手が止まらなくなり、少女の話を聞いていなかった。


 食べ終わった時、初めて少女が俺の方を見ていることに気づいた。少女は苦笑いをしていて、俺は恥ずかしさから思わず額を掻いてしまった。

「あのー、そろそろ会計しませんか。」

少女から言われて、日が落ちていることに驚いた。席を立った時、俺はお金がないことに気付き、どうすればよいか迷っていたら。

「私が払いましょうか。」

少女からのありがたい言葉。正直女性に払わせるのは、紳士としてダメなことだが仕方がない。

「す、すいません。」

俺は頭を下げて御礼を言った。

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