第45話 答え合わせ

『ここは日本の……白水しらみず家が保有している土地だよ。そして、人工知能によるバーチャル空間を重ね掛けして……ファンタジー世界のごとく、魔法を放ったりできるように設定していたんだ』


 朝春あさはるの人工知能の答えに、忠義ただよしは納得したらしい。沈黙する彼のかわりに純汰じゅんたが尋ねた。


「あの! バーチャル空間を重ねているということは! 他の方々が生きていたりなんかは……」


『残念だけど、実際に殺し合ってしまっているからね。生き返りはしないよ』


 残酷な事実に、純汰が黙り込む。それに視線をやることなく、景梧けいごが口を開いた。


「さて、話は終わりだ。そろそろ……始めるぞ。俺達の所持品はどこだ?」


「それなら知ってるよー! ここにあるから、さぁぱーっとやっておくれ! そして……頼むから早く家に帰してくれない?」


 こよみの軽薄ながらの懇願に、目線だけを送ると指定された場所に触れる。どうやらロッカーだったらしく、そこには言葉通り、各々の所持品が入っていた。

 それを取り出し、邪魔な甲冑を脱ぎ捨て堂々と着替えだす景梧。


「お、お兄さんって……どうしてそう!」


「まぁ純汰君。ここはわたし達男しかいないわけですし……諦めて着替えましょう?」


 忠義に促され、渋々純汰も着替えだす。重苦しい甲冑から解放された三人は、自分達の首にかかっているペンダントを見つめる。


「おい、こいつはどうしたらいい?」


『もう必要ないし、命の危険もないから外していいよ。それじゃあ、兄さん。そして、巻き込んでしまった君達、本当にすまない。――さようなら』


 朝春の映像が乱れ、消えていく。彼の人工知能はおそらく設定上長く存続できなかったようだ。

 の余韻に浸ることなく、景梧は施術を始め、純汰はプログラムの再構築にとりかかる。


 残された二人は、互いに気まずそうにしながら静かに終わるのを待った。


 そうして――無事、願いの半分は叶った魔女達により、彼らは解放された。


 死のゲームという名の、ただの色恋沙汰の後始末から……。


 ****


 ――結局のところ、このゲームは何をしたかったのかって?


 そうだな……簡単に言うなら、復讐……かな。

 

 そう、復讐。


 ぼくを殺し、裏切り、手柄を独り占めしようとした霧彦きりひこ

 ぼくから恋人を奪った湖西頼こにしらい


 本当は、この二人だけで殺し合いをさせるつもりだったんだ。

 だけど、そこに彼女が介入して……改変されて、円卓の騎士とマーリンを集めてしまった。


 そこから歯車がおかしくなって……今の状況さ。


 死してなお、ぼくは罪深い。とてもアーサー王には……成れないね。

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