第16話 第三者の登場により

「お取込み中のところ、失礼致します。わたしはベディヴィエール卿の役目をおわされました、陰田忠義おんだただよしと申す者です。以後、お見知りおきを」


 そう言って自身の名を明かすと忠義は、二人に向かって一礼する。そして、ゆっくりと二人の間に立つと、彼らに向かって口を開いた。


「お二人は、なぜ争われているのですか?」


 忠義の言葉に二人は思わず呆気にとられてしまう。なぜなら――


「お二人とも、ただ言われるがままに殺し合っていたのではないですか? 魔女達に言われるがままに争う意味が果たしてあるのでしょうか?」


 問われた二人は、答えられない自分達に気づく。その様子を見て忠義は更に話を続ける。


「だから、提案があります。殺し合うことなく生き残り、各々の帰るべきとこへ帰りませんか?」


「どういう意味ですか? ベディヴィエールのお兄さん。殺し合わないとここから生きて帰れないんですよ! いいんですか?」


 ガラハッドである水色の髪の青年がそう訊き返せば、忠義は静かに首を横に振る。


「帰る方法なら別にもあると思うのですよ、わたしは。そう……例えば主催者を問いただすとかね?」


 その言葉にガウェインである彼はハッとさせられる。確かに、主催者の存在については全てが不明だ。その主催者を特定することができれば――。


「えーっと、忠義くんだっけ? おれはその話に乗ろっかな~? あ、今さらになるけど、自己紹介ね? ポジションはガウェイン、本名を杜太陽やまなしたいよう。よろしくね~? そこのガラハッドの君もさ! どうかな?」

 

 そう声をかけられたは少し考える素振りを見せた後……盾を構え直した。


「すみませんが、ぼくは殺し合って生き残らないとんです! なので、お二人とも殺します! 絶対に殺します! でも、二対一はさすがに不利ですしベディヴィエールのお兄さんを信じられるのかも判別できませんので! ここで一端失礼します!」


 そう言うや否や、風のように走り去っていった。取り残された忠義と太陽の二人は、しばらく見つめ合い……お互い協力し合うことにした。


 確かに、


 だからこそ、手を取り合うことにした二人は並んで森から出て行く。――警戒心だけは解かずに。


(なんとかこの場は凌いだけど……確かにあのガラハッドくんの言う通り、忠義くんの言うことが全てとは思えないからね~)


 疑いは無くさず、それでいて殺し合うのではなく協力体制を保つ。それがベストな選択だと言い聞かせるように――。

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