第六話~デアドラ日記1~

皆様こんばんわ。

今回は日記形式の話となります。

初めての試みでしたが楽しく書けました。


======================================


1日目?

 眠る前に日記をつけていこうと思う。そうでもしないと、翌日には疲れで師匠への恨みを忘れてしまいそうだから。


 こんな考えに至ったのも、今日から始まった修行中での出来事が原因だ。


 師匠に弟子入りし、早速修行開始だと思ていたら、その内容は師匠との組み手による修行ではなく、ルーン魔術の習得だった。

 

説明を聞けばこのままではスカディラビィアの瘴気で俺は死ぬとのこと。


ひと悶着はあったが、それなら仕方ないと納得はした。


 だが、俺がこうやって日記を付けようと思い至った出来事はルーン魔術の修行中でのことであった。


 ガーデンから城に戻り、師匠の案内で螺旋状の階段を上がり、一つの部屋へやって来た。


 そこには四方を囲み並ぶ巨大な棚と、そこに収納されて立ち並ぶ分厚い蔵書の数々。図書館とも見紛うばかりの光景が広がっていた。


 師匠はあの部屋を「愚者の間」と呼んでいた。


その部屋では、マグメリアで起きた様々な歴史が観測され、収集されているらしい。時間があればいろいろ手に取って見てみたいものだ。


愚者の間で師匠から直々に、文献も用いてマンツーマンでルーン文字について学ぶ。


それはいいのだが、師匠の服装が気になった。


 師匠は先ほどまで着用していたバトルドレスから、新たにフォーマルでタイトな服装を魔力で生み出して着ていた。ついでにメガネまでかけて。


 師匠がいうにはスーツというらしい。知的に見えるだろうなどとドヤ顔を浮かべていた。


正直言えば似合っていたしその通りなのだが、自覚があるあたり腹が立つ。見た目がいいからって調子に乗りやがって。


 というよりも何なんだあの服は。なぜ礼服のような見た目なのにあんなにスカートの丈は短いんだ。


裾がヒラリと上がって生足が見える度に気になって意識がそれるからやめてほしい。


 というか師匠は気づいていて楽しんでいる節がある。


途中からわざとやってんだろあれ!


ちくしょう…生後一万年の中身ババアのくせに……


 話が逸れたがそんなことはどうでもいいんだ。俺が一番許せなかったのは実践の時だ。


 まず初めに大前提、ルーン文字を教えられた。ルーン文字は、現代の複数の文字を連ねて一つの意味を表す方式ではなく、文字一文字一文字に意味が与えられている不思議なものであった。


 次に、魔力の扱い。俺も自身に魔力を宿しているが、扱いに関しては更々である。


 魔力の練り方、ルーン文字に自身の魔力を乗せてのルーン文字の描き方を簡単に教えられた。


 一通り師匠からルーン魔術を入門編程度に話を聞いた頃、触媒のサンプルを見せてくれた。


それは師匠が急ごしらえで用意した触媒だったらしい。赤い石に教えてもらったルーン文字が一文字刻まれていた。


 師匠が手に持つと、魔力に反応して淡い光を放っていた。


 師匠がいうにはその辺で拾ったただの石ころらしいが、俺にはとても幻想的で美しいものに見えた。


 この理解し難い、だが人を無条件に惹きつけるような魅力が神秘というものなのだろうか。


 触媒である石ころに視線が釘付けとなっていた俺に、師匠はそれを差し出し、使ってみろと言った。


 今こうして日記を書きながら振り返っていれば、俺ももう少し考えて行動すれば良かったと思う。


 でもまさか、触媒が爆発するとは思わないだろ。


 爆発と聞けば聞こえは悪いが、規模は小さく俺の顔と手の皮膚が火傷を負った程度だ。


 くっっそ痛かった。


 傷は幸い、師匠の魔術によりすぐに癒えることが出来た。何でも死んでいなければ大抵の傷はすぐに治せるらしい。


 俺は計らずしもルーン魔術の凄さを体感できた。


 しかし、納得できるかどうかは別問題だ。


 師匠は「このように、生半可な知識でルーン魔術を行えば、呪い還しを喰らう羽目になる」なんて一切の悪びれる様子もない表情で言ってのけやがった。


 俺が当然キレると、あの冷血野郎は「先ほど外で下手に扱えば神秘は呪いとなって自分に還ることになると説明しておいただろう。忘れる方が悪い」なんて言いやがる。


 お前が勧めたんだから大丈夫だって思うだろうが普通!!


 俺も思ったよ!


そういえば呪い還しがどうのって言ってたなって、爆発で吹き飛びながら!


 でも師匠が勧めてんだから対策がしてあんのかと思うじゃん!いやあの時は思ってなかったけど!普通はそう考えるだろ!





♢♦︎(書き殴った跡)


 ふう……


怒りで冷静さを失ってしまっていた。


クールになれデアドラ。俺は恨みを忘れない男。


この恨みはいつか絶対必ず同じ方法で仕返ししてみせる。


その決意を忘れない為にも、俺は今日の出来事をここに記すのだ。





======================================

如何だったでしょう。

個人的にはデアドラ君のキャラが出しやすくて描いていて楽しかったです。


面白い、続きが見たいと少しでも思っていただけたら応援やコメント、レビューをいただけるとモチベーションに繋がりますのでありがたいです。遠慮なく押してください!!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る