3日目 最終

「最初はここ!」


そういってやってきたのはメリーゴーランド。きらびやかな装飾が派手すぎるほど発光している。


「一緒に乗ろ!私がお姫様で、侑斗くんが白馬の王子様!」

「うん。それじゃあ、お乗りください、姫様」


僕は伊豆奈の前に片膝をつき、伊豆奈を馬車にエスコートした。

僕が入っていくのも見守っていると、中に入った瞬間


「ありがとう。ちゅ!」


と言いながら、頬に唇を付けた。


「…ありがとうございます。姫」

「うむ!ささやかな褒美じゃぞ!なんて、えへへ」


僕は微笑んで頭を軽くなで、前にある白馬を模したものに乗った。


「それじゃ、姫様。きれいで幻想的なこの景色をたっぷりご堪能してくださいね」

「は~い!」


まもなくして、事前に用意されていた台本を読み上げ、ここのスタッフがメリーゴーランドを動かした。

メルヘンチックな曲とともにきれいな景色が展開された。


「きれー…」

「楽しんでいただけて喜ばしい限りです」


そんな時間も、すぐに終わり、僕はもう一度伊豆奈の元へ行った。


「姫様、ご到着いたしました」

「あ…うん。えへへ、ありが…」


僕は、伊豆奈がそう言って出てきた瞬間、伊豆奈の首元に腕を置き、足に腕を当てて伊豆奈をお姫様抱っこした。


「きゃあ!び、びっくりした…」

「姫様。お運びします」

「~~~~~っ!は、はいぃ…」


伊豆奈は真っ赤になって、僕の胸に顔を押し当て、顔を隠してしまった。

僕は彼女を抱っこしながら、彼女が行きたいであろう場所に連れて行った。


「…ッチ!しゃーねぇ、あれぐらい。あれぐらいを壊すのが、一番面白れぇからなぁ…フヒヒッ!」


と声が聞こえたから、アイコンタクトで指示をしながら。



「着いたよ~。ほら、いつまで顔隠してるのさ!」

「あ……うん…うぅ…」


僕が伊豆奈を連れてやってきたのは観覧車だった。

実は、ここは伊豆奈が自室で一番行きたいと言っていた場所だった。


「恥ずかしい…」

「うれしくない?」


僕がそう尋ねると、伊豆奈は首を振って


「そんなわけないよ…」

「よかった。じゃあ乗ろっか」


「うん!」と言って、僕らは観覧車へ向かった。

二人くっついて。隣同士で僕らはゆっくりと空へと向かった。


「きれーな景色だね…」


目線の先には、昨日までいた海の綺麗な景色が映っていた。

3日間、僕らはいろんなところを回って、絆を深めて。最高の3日間を過ごした。


「…ねえ、約束守ってね」


唐突に行ったその約束という言葉。僕は、それが何のことを指しているのかを明確に知っていた。

だからこそ僕は


「…もちろんだよ」


といった。

観覧車も最高潮に達し、夕暮れの日差しが異邦の地の鮮やかな姿を照らし出していた。


「……幸せ」

「…僕も」


肩を寄せ合い、僕らはその幸せな空間をしっかりと堪能した。

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