第35話 獲物と狩人

 杉戸は柔剛やカブトと一緒にダンジョン内を探索し続けていた。その途中で何度か魔物に襲われたりしたがレベルアップした柔剛の協力もあってなんとか対処出来ていた。


「俺のレベルも3に上がったぜ」


 そう言った柔剛のステータスを確認する。


ステータス 

名前 大門 柔剛

レベル3

戦闘力80

気力75

魔導力5

魔力5


スキル

・柔術の心得・返し投げ・投げ強化・絞めの呪縛・受け身

称号

・柔の道を行く者・杉戸のペット


 これが柔剛のステータスだった。改めて見ると柔道関係のスキルが多い。これに杉戸は驚き、そして判断した。与えられるステータスは元の本人の資質がある程度関係してくるのかもしれないと。

 

 ちなみにカブトもレベルが上っていた。柔剛と同じレベル3に上がっていたのである。


名前 カブト

レベル3

戦闘力70

気力90

魔導力28

魔力30

スキル

・突撃・装甲強化・強音羽

称号

・杉戸のペット


 新しいスキルも一つ増えていた。攻撃系のスキルのようだった。そして二人のレベルアップにあわせて杉戸もまたレベルが5まで上昇していた。


ステータス

名前 今中 杉戸

レベル5

戦闘力36+

気力100+

魔導力50+

魔力47+

スキル

・ナビ・飼育・好感度表示・攻撃指示・守備指示・パワーフード・同調

称号

・虫好き・虫の使い手・飼育者


 新しく覚えた【同調】のスキルはペットのステータスやスキルの一部が反映されるというものだった。杉戸のステータスの数値横に+がついているのがその証拠だった。


「柔剛もカブトも凄いよ。僕のレベルも上がったしこれでこのあたりを進めるのも楽になるかも」

「おう! どんな相手でも今の俺ならこてんぱんに出来そうだぜ!」

 

 柔剛が力こぶを見せつけて自信を見せた。その様子に杉戸は頼もしくも思ったが同時に気を引き締めた。


「うん。頼りにしてるけど慎重さは保たないとね。これまでと同じくカブトの索敵能力にも期待しているよ」

「ギィ!」


 杉戸の声掛けにカブトが任せてと言わんばかりに返事する。カブト虫のカブトはその小さな体と飛行能力を活かして偵察を買って出ていた。


 これによりこれまでも危険そうな相手は避けられていたとも言える。ステータスを得たとは言えカブトも柔剛もダンジョン探索に余裕が持てるほど強くなれたわけではない。


 単体の相手であれば勝ててきたが、当然群れで行動する魔物もいたわけでそういった相手がいる場所は迂回したりなどで遭遇しないようにやってきていたのである。


 ただ、それによる弊害も多少は出ていた。目的は出口を探すことだったのだが今いる場所がどこかいまいち掴みきれていないのだ。


「ところでよう。段々と出口から遠ざかってないか?」


 ダンジョンを進む二人だが、途中で後頭部を擦りながら柔剛が疑問を口にした。これに杉戸は苦笑しか出来なかった。


 杉戸からしても同じ気持ちだったからだ。ゲームなどでは下層に行くときには階段を使うのでわかりやすいが、この場所にはそんなものはなかった。


 ただなんとなくだが足場が下がってきている気はしていた。つまりこのダンジョンはなだらかに下層へと繋がっていく構造――杉戸はそう考えるのが妥当な気がしていた。


「もしかしたら戻った方がいいかな……これがゲームのようなダンジョンだとしたらこれ以上進んだら更に凶暴な敵が出てくるかもしれないし」

「マジか。でもこっから戻るにしても道はわかるのか?」

「う~ん。そこは記憶を頼りになんとかしないと駄目かな。ただ、戻るとなるとあいつと遭遇する可能性もあるし」

「それは残念だったなぁ。エンカウントしちまったぜぇ」


 会話の中に混ざり合う異音。杉戸たちがぎょっとした顔で声の主を見た。


「やっと見つけたぜぇ獲物ども」

 

 そこにいたのは血濡れのハンマーを手にした邦夫だった。ギラギラした瞳はまさに獲物を見つけた狩人のソレだ。

 

 杉戸は本能的にこの男は危険だとそう感じた。何故なら何を考えているのかわからなかったのだ。ただ純粋に殺すことだけを楽しんでいる目をしている。


 柔剛もこの男が危険な存在であるのを感じ取ったのか自然と構えを取っていた。邦夫から視線を外すことなく一挙手一投足に注目している。


「くそ! やっぱり追って来てたのかよ!」

「当たり前だろうが。だけどお前、この短時間で雰囲気変わったか? ただのガキとは思えねぇ空気を感じるぜ」

 

 そう言いつつも邦夫がペロッと舌なめずりをした。ステータスを手にした柔剛は邦夫が知っているただの子どもではない。


 しかし――それは邦夫にしても一緒ではないか。そう杉戸も感じ取っていた――

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