第30話

この世にいないんだろ。


 俺が引退したのは23年前だし、既にこの世にいないファンの方が多いはずなんだよ。


 もし俺に会うとしたら、会いに来るとしたら。


 それは死者だ。


 地元のアクション講座だったり、朗読の講座に参加して、そうこの地下。位置としては、多分この下は、まっすぐリハーサルAだと思う。

 

 地上で、神様たちが踊っている時、下にいる、演劇が奴隷たる俺たちは、神様に向かって生贄を捧げる。


 この下で、よしもとばななのTUGUMIを読んだよ。


 東京に向かう、って。


 不倫でできた子供が、父親を見送る場面だよ。


 その原作を読んで、解説読んで驚いたよ。


 作者は、あの超絶美少女を自分自身だと思って書いてるんだってさ。


 いや、書いたと言うべきか。


 正直、それ読んで驚いたよ。


 あんな不細工な女が?


 自意識過剰にもほどがあるだろうと。


 美人が自分を見て、超絶美人ですっていうのは構わないよ。


 でも、あの女。


 決して美人でもなければ、誰かを惹きつける魅力があると思えないんだよなぁ。


 女っていうのは、これだから女っていうのはさ、自分の顔と、自分の顔鏡で見たことないのかなあって思うよ。


 まぁ、江戸時代の基準だったら、ああゆうのが美人なんだろうな?


 まぁ。


 俺はこう聞いた。


 美というものは、不確かなものです。その基準によって、美か、そうでないか判断するのは、それは傲慢な考えです。


 ってね。

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