「くそっ！！ダメかっっ！！」

　ナスカは苦戦していた。

　鱗が硬すぎて刃が全く通らないのだ。硬い系のモンスターにはとことん不利なナスカだ。

　通らないだけならまだいい方で、弾かれた刃が徐々に刃こぼれしていく様を見てナスカは心底焦っていた。

「ジリ貧だ⋯。氷系の魔法も無限に使える訳じゃないしな」

　そして何より相手は空中に留まりながら飛び道具である火球で攻撃してくる。

　地上にいる分には避けることが出来るのだが、攻撃する際いちいちナスカがジャンプする事になる。空中では身動きが取れないため圧倒的に不利な状況を常に強いられている。

　何とか引きずり降ろせればいいのだが、と、ナスカが思っていたところ、ドラゴンがいきなり空中で体勢を崩し、まるで蚊取り線香の煙に触れた蚊のように地面に落ちていった。

　石だ。誰かがドラゴンに向かって石を投げたのだ。

　ドラゴンの鱗は鋭利な刃物も、本来火系に効果抜群であるはずの氷系魔法も通さないくらい頑丈だ。

　そんな防御を打ち破る程の威力を持った投石。

「こんなことができるのはあのバカしか居ない！」

　ナスカは石が飛んできた方向を見る。

「お〜い」

　そこには手を振るチャールズの姿があった。

「やっぱり！」

　ドラゴンが地面に落ちた瞬間チャールズは持っていた剣を鞘から抜き、相変わらずのマイペース小走りでドラゴンに向かっていく。

　横たわる形で落下したドラゴンもすぐ体勢を立て直そうとジタバタしていたが、リチャードは持っていた剣でドラゴンの首へ剣を振った。

　刃は通り抜けたように見えた。

「終わりましたよ〜ナスカ〜」

　チャールズは剣を投げ捨ててあくびをした。

　その時、古舘が実況をしにやってきた。

「さあいよいよドラゴン大山脈とでも言いましょうか大きな⋯⋯あれ？」

　ドラゴンの首は胴体から離れ絶命していた。

　首の下には血だまりができている。

「あ、やっぱり強かったですね。来る必要なかった」

　ショーンＫも古舘の後ろからついてきたが、ドラゴンの様子を見て気が抜けた表情をする。

「おいみんな！ドラゴンは死んだ！これから住民の救助活動に移る。いいな！」

　そして部下と共に生き残った住民を探しに行った。

　対してナスカと古舘は呆然としながら、今にも立ったまま寝そうなチャールズの姿を見つめていた。

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