ナスカ回想

第33話 そして私は不死になった 1

 竜の肉を食べると不死になる──────


 そんな伝説が、ナスカの生まれ育った地域にはあったのだ。




 ──とある港町


「おーいナスカ!ちょっと来いよ!」


 ナスカの兄、カーヤが家の外で呼んでいる。

 いつも蛇の抜け殻や変な虫を見つけるとナスカを呼んで見せつけるのがカーヤの習慣だったため、毎度毎度呼ばれるナスカはいい加減うんざりしていた。


「なに?今忙しいから用件から言って」

 机に向かって学所がくしょの課題に取り組んでいた。魔法学、動物学、調合学、兵戦学…。15歳にもなると勉強する事が沢山ある。兄のお遊びには付き合っていられないのだ。


「おーい!ナスカってば!ちょっと!!」


 浜辺が見える窓から顔を出すカーヤ。今日は妙にしつこい。

 よっぽど珍しい物を見つけたのか。


 それともよっぽど暇なのだろうか?


「しつこい!アンタみたいな探検バカと違ってコッチは忙しいの!」


 ナスカは聡明な少女だが少々口が悪く、学所内では浮いており、親しい人間はカーヤを除いて皆無だった。


 元から毒舌だった訳ではない。


 幼い頃からよくに冷遇されていたのだ。


 カーヤとナスカ。


 この2人、実は本当の兄妹きょうだいではない。


 ナスカは養子だった。


 つまりナスカから見るとカーヤの両親は義両親ぎしんにあたる。


 前述したが元から毒舌だった訳ではなく、小さい頃はナスカもおおむねカーヤと同じくらい優しく扱われていた。


 だが、ナスカは小さい頃から向上心のある人間であり、自ら進んで勉学に励み、学所でも評価されるようになった。


 次第に義両親は実子カーヤ養子ナスカの成績格差を良く思わなくなっていき、いつとも知れずナスカに対するいびりが始まっていったのだった。


 義両親の悪意に比例して、ナスカの口は悪くなった。


 しかしカーヤだけは違い、いつもナスカを庇ってくれていた。


母親が出す予定だった手紙が無くなった時、真っ先に疑われたのはナスカだったが、カーヤは必死に否定してくれていた。


 夕食に前日の残飯を出されるナスカに対し、こっそり自分の総菜を大量にわけてあげたりもした。


 元々ナスカの部屋は無く、押し入れで過ごしていたのだが、その時もカーヤが自分の部屋をナスカと共有するよう、渋る父に対して何度も熱心に頼み込んでくれたのだった。


 そんなカーヤの優しさは、ナスカが毒舌家になってしまっても、全く変わることがなかった。





 ナスカ編が始まります。続く。

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