第24話 陰陽師はゲーム配信する

 学校が終わり、初のライブ配信ということで、ゾンビゲームを選択した。


「どうも、真中ふびとです。聞こえているかな? 今日はゲーム配信をするよ」

『聞こえている』

『ふびと様、素敵』

『結婚して』


 コメントが次々に寄せられる。

 けっこう集まっているな。

 映像は俺のアップ。


「今日やるゲームは鮮血の絶叫。内容はよくあるガンシューティングだよ。じゃ始めるね」


 カメラがゲーム画面に切り替わった。


『やだ、ふびと様を映して』

『グロいゲーム画面はいいから』


 どうもこの企画は失敗のようだ。

 いっそのこと、俺が歌って踊った方がいいような気がする。

 陰陽師繋がりで、ゾンビゲームを選んだが、チャンネル登録者層とマッチしてない。


 とにかくゲームだ。


 ゲーム画面はふらふらとうろつくゾンビ。

 プレイヤーの武器はピストル。

 照準を合わせて撃ちまくる。

 半分は外したな。

 スキルを使わなければこんな物だ。

 こんなぬるい配信はだめだ。


「ちょっと待って」


 俺はゲームを中断した。


『トラブルかな』

『待ってる』


 ネットで検索掛けて、射撃のハウツーを漁る。

 日本語では駄目だったので英語のページを読んだ。

 100発100中をうたい文句にしているのがある。

 これがいいな。


「カタログスペック100%」


 よし、再出陣だ。


「お待たせ」

『ううん、今来たところ』

『愛してるって言って』


 ゲームを再開する。

 スキルの効果は凄まじい。

 1発も外すことなく、ステージ1を終えた。


 ステージ2になる。

 調子に乗ってバンバン撃っていたら、うわーの声。

 どうやら人間を撃ってしまったようで、1ミスだ。


 100発100中は味方にも適用されるみたい。


『どんまい』

『1発も外さないなんて凄い』

『もしかしてプロゲーマー』


「気を取り直していくよ」


 人間は撃っちゃ駄目。

 そう言い聞かせながらゲームをする。

 逃げ惑う人間がうざい。


 こいつは人間と、そう思って照準を外したら、ゾンビに変貌。

 くそっ、ウイルス罹患者か。

 2ミス。


『あれはしょうがない』

『どんまい』

『がんば』


「じゃあ、続きいくよ」


 背景は工場になった。

 ハイプの陰から出てくるゾンビが嫌らしい。


 何気なく水たまりを踏んだ。

 水たまりの中からゾンビが現れて、足を噛まれてゲームオーバー。


「シット。ガッデム」

『悪態も素敵』

『続きやるの?』


 カメラを俺のバストアップに戻した。


『素敵』

『笑ってみて』


 俺は手を振って笑った。


『きゃー』

『ふぅ』

『きゅー』


 コメントが来なくなった。

 あれっ、放送事故か。

 しばらくしてから。


『なんという破壊力』

『一生のお宝にします』

『笑顔、好きです』


「ありがと、ばいびー」


 配信は終わった。

 くそう、もうゲーム配信は当分やらない。


 スキルの力をもってしても駄目だとは。

 ゲームを舐めていた。


 動画の再生回数は伸びない。

 1万もいってない。

 チャンネル登録者数は453人だ。


 気を取り直してモデルの仕事。


「目線下さい。いいねぇその表情。どんどんいくよ」


 こんな感じで、モデルの仕事はトラブルなく終わった。


 陰陽師として知名度を上げるのはテレビとかに出るのか手っ取り早いのかな。

 それもモデルじゃなくて陰陽師としてだ。

 ちょっと無理ゲーくさい。


 破壊活動なら自信があるんだけどな。

 勇者としての力も知名度を上げるには役立たない。

 金はネクターポーションでどのようにもなる。


 いっそのこと金をばら撒いて、テレビ出演をもぎ取ってみようか。

 それには何億という金が必要だな。


 きっかけが何かないと厳しい。


 『これで君も陰陽師』という本でカタログスペック100%しておいたから、陰陽師として世界に認識はされているはずだ。

 だけど、カタログスペック100%は重ね掛けが出来るスキル。

 陰陽師としての知名度もあればあるほどいいような気がする。


 グリプロの事務所に寄る。


「お疲れ様です」

「お疲れ様」


 スタッフが挨拶を返してくれた。


「陰陽師のネタを探しているんだって」


 スタッフの一人がそう聞いてきた。


「ええ。なにかいいのあります?」

「宙に浮いている黒い渦を目撃したって話がある。テレビ局が特番を組むらしいよ」

「出たいですね」


芦ヶ久保あしがくぼさんに、言っておくよ」


 黒い渦ねぇ。

 悪霊かな。

 あやかしかな。

 神だったりして。

 だとしてもやることは一緒だ。

 やっつけるだけ。

 こういう方面は得意だ。

 テレビで黒い渦を撃破する瞬間を放送できれば、きっとバズるに違いない。


 俺は情報を集め始めた。

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