第5話 親指

 デザインカッターでかなり深く指を切った。しかも右手の親指の腹。最初なかなか血が止まらないし、鮮血ってこんな赤いんだ、でも絵の具の赤にほんの少し橙色かなんかが入っていると言うかなんというか純粋な赤とは違うような気もする、なんてことも思いつつ水で洗った。


いや、そんなことを考えないと悪いことばかり考えそうで。医者行くのも考えていたのだけれど、時間帯が悪かった。だって12時前だったのだ。近い診療所を調べたら辿り着いても診療時間が終わった時間で、開始が14時30分からだった。どうしても血が止まらない、痛みが強いとかあれば医者に行こうと諦めた。


洗面所で手を上に上げて絆創膏で傷口を抑えて血止めをした。割りと長い間血が止まらなかった。止まったかなと思ってキズパワーバッドをくるっと貼ったら、止まっていたと思ってた血がまた少し流れた。したたり落ちるほどだったら考えたけど、そうでもなかったのでキズパットそのままにしておいた。キズパッドの白くなっている部分の下は血溜まりだけど大丈夫なのかな?と思いつつ。取り敢えず今日はお風呂に入らないでいるかなっと。


 次の日もまだ触ると痛い。でも親指の腹ってかなり使う部分だと実感する。何をするにも触っていて痛みを感じる。歯を磨くにせよ何にせよもう嫌になる。パソコンを打ち込むぐらいだとまったく使わないけど、スマホの操作にはよく使っている。指をどう使っているかなんて日常はあまり意識してないけど、こういう時に実感する。


そういえば、昔の刑罰で反乱捕虜の奴隷落ちみたいな場合に親指と小指を落とすという話を聞いたことがあったが、親指ないと大変だろうなと想像はしていた。落ちてはないけど痛いので親指を極力使わないようにしようとするとかなり生活に不便だ。


ある意味まったく関係ないのだけれど、Web小説とかでパーティから無能だからと追い出される話がよくあるけど、いなくなって初めて分かるというのに近いのかもしれないと思った。指は5本でバランスをとって使っている。で、例えば小指はあまり認識されてないけど、物を握ったりとかするときのバランスとかとったりと有用な役割をしている。


でも、目立たない。親指を極力使わないようにしようとすると、割りと小指が活躍しているのを実感したりしたので、どの指も大事だなと思った次第で。バランスが崩れないと実感するのは難しい。


 一週間とちょっと経った。キズパワーパッドの白く見えていた部分がほぼ無くなり、下にあった赤黒いのが見えるようになった。どうにも傷口付近の血溜まりぽいのが気になってしまいキズパットを外してしまう。赤黒いのは指に残らなかった。


傷口は1センチというところか。まっすぐ切れていないし、ちょっとだけどえぐれてるしでちょっと恐い。別の普通の絆創膏を貼ったが、うっかりそのままで洗い物をして濡らしてしまったのでまたまた外す。キズパッドは多少濡れてもなんとも無かったのを考えると、お高いだけあって性能は良いのだなと実感する。


そこで再び、小さなキズパワーパッドを貼った。端っこから徐々に外れ始めて怪我して14日目、二週間たった今は何も貼らずにそのままにしている。キズの長さは定規で測ると1.2センチほど、深かったはずなのでこれでは血がなかなか止まらなかったのも仕方ないかと傷口を見て思う。

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