第9話


旦那様は相変わらず、ふみを見つけ触れたがる…。


しかし、女中や女房が見ていたならば、面倒なので、こそりとふみを部屋に呼ぶ…、


「金平糖だよ、甘いから食ってみなさい」


金平糖の入った袋を袖に入れ、ふみを引き寄せ口を吸う…。


ふみは、嫌でも拒めない、旦那様のなすがまま…。


胸を開かれ、乳を嬲られ、股ぐらに手を挿そうとした頃に、廊下より、奥方様から呼ばれ助かる…。


「ふみ!ふみはどこじゃ!!」


身支度直し、急ぎ奥方様の部屋に行き、廊下に畏まり声を掛ける。


「ふみです…」


ガラリと襖が開き、行き成り、ふみへ平手打ち…。


「お前はまた、旦那様に色目を使ったな!」


「いいえ、そんなことはありません…」


「旦那様の部屋に居たであろう!!言い訳無用じゃ!!」


奥方様は馬乗りになり、ふみの頬をこれでもかと叩き続ける…。


旦那様はふみの悲鳴を耳にしても、知らぬ存ぜぬ、知らん顔…。


奥方様は打ち疲れ、肩で息し、こう告げる。


「お前は本に性悪じゃ、勝手仕事と生糸紡ぎ、それが済んだらここへ来い!」


「ただ居るだけでは、せんがない、掃除や按摩をし、旦那様が寝るまではここに居ろ!」


奥方様の嫉妬の怒りは、ただただふみへと向けられた…。



暗い内に目を覚まし、勝手仕事でキヨに叩かれ、昼は女工に疎まれて、夜は奥方様に睨まれる…。


そして皆が寝静まり、やっとふみは床につける…。


ある晩、奥方様への按摩の最中、余りの疲れと眠たさでついついふみは、手を止めてうつらうつらとしてしまう…。


それを怒った奥方様は、はたきの柄を逆手に握り、叫びながら滅多打つ…。


ふみの悲鳴に旦那様が何事ぞやと部屋に飛び込む…。


「何事だ!奉公人を殺す気か!!」


旦那様はこれは好機とほくそ笑み、


「ふみをお前に任せておけぬ、夜はふみを部屋に戻せ」

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