僕のLADY

百方美人

第1話

夜は考え込んでしまう。


カーテンの隙間から月明かりがさし、薄暗い天井をぼんやりと、ただ、見つめる。


あぁ、いつからだろう、あんなに月がぼやけて見えるようになったのは。


僕は時々思い出す。


「月が綺麗ですね」


と言ってくれた彼女はもう何処にもいないのだと。



ある夏の事。


僕は、定期試験の勉強を乗り越え、バイトに明け暮れる日々を過ごしていた。


週5のシフトをこなし、毎回汗だくで家に帰るのだ。


大学2年生の夏なんて、遊ぶ為にあると言っても過言では無い。本当は、友達とどこか旅行したり遊びたかった。


友達の拓斗たくとは、半年付き合っている彼女が大の温泉好きという事で熱海の温泉に行くらしい。


奮発して良い旅館も取ったらしく、「金無い〜」が最近の口癖だった。


高校からずっと一緒の浩平こうへいもそう。彼は、先週の夏祭りで好きな子へ告白した。

OKを貰えたらしく、彼女と何度もデートに行っている。


奢り奢られ論争が世の中をざわつかせていたが、浩平はデート代を全て出してるのだと言う。


「お支払いはどうされますか?」


「カードで。」


スマートに会計を済ませ、彼女に財布を出させないようにしているらしい。


しかし、浩平の彼女は奢られる事に抵抗があるらしく、帰り際にデート代の入った手紙をいつも渡されるのがオチ。


僕は、男が全部出さなきゃいけないのがよく分からない。でも、奢られて当たり前なんて思っている女性もいるのだから、浩平は良い彼女を捕まえたなと思った。



そして、どんな男でも彼女には良い格好したいのが男の性なんだと、僕は改めて認識した。

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