早すぎる神との決戦

第11話、早すぎる決戦

 次元の境界はざま。世界の境界を開く門のかぎを開け、俺達は次元の境界を歩いていた。

 俺の服のすそを、シアンは嬉しそうにぎゅっと握り締める。

「どうした、シアン?」

「ふふっ、ううん……何でもないです」

「……そうか」

 俺は何も気づかないふりをして、そのまま再びあるき出す。俺だってシアンに再会出来たのがうれしいんだ。ずっと、さみしい思いをしていたシアンの嬉しさはそれこそずっと大きい筈だ。

 そう、シアンはずっと俺の事をおもってくれていた。俺だけの事を愛してくれていたんだ。それが、とても嬉しい。いとしいから。

 思わず、俺の口元もにやけてしまう。

「どうしました、シドー?」

「愛してるぞ、大好だいすきだシアン」

「はい、私もです」

 そう言って、次の世界へとたどり着く……直前。

 まるで雷が落ちたような轟く声がひびいた。

「……我が意にそむく反逆者め、我直々にほろぼしてくれる‼」

「っ⁉」

「———このこえは‼」

 瞬間、俺達の足元がかがやきそのまま光にまれていった。

 ……気付けば、俺達は神の目の前に立っていた。

 神はきびしい表情で俺達を。いや、俺一人を見据みすえている。俺の身体はまるで痺れたかのように動かない。不自然ふしぜんなくらいに。恐らく、シアンの身体もそうだろう。それは神の力がこの世界に働いているからか。或いは神が俺達に何かしたのか。

 とにかく、俺達の身体はまるで痺れたかのように動けないのだ。

 此処ここまでか、此処まで俺達と神とのは大きいのか。そう、改めて実感する。せざるをえない。

 しかし、此処でじっとしている訳にはいかない。此処で神にやぶれれば、次に神が目を向けるのは間違いなくシアンだ。彼女に手を出させる訳にはいかない。

 俺の抵抗も虚しく、神は神力しんりきの籠もった言霊ことばを放った。

「我が意に逆らう愚者ぐしゃよ、疾く消えるが良い‼」

 瞬間、俺に強烈な電気が流れたようにびくんっと身体がふるえる。いや、まるでではない。俺の身体には、可視化出来るレベルで強烈な電気でんきが走っている。

「がっ、あ……」

「シドーっ⁉」

「っ、この……程度ていど、が……ああっ」

 しかし、抵抗もむなしく俺の身体は徐々じょじょに消滅していく。俺が消えてゆく。俺の、身体が、存在そんざいが……消え、て……

 そして、そのまま俺の意識はやみへと飲まれて消えていった。

 ・・・ ・・・ ・・・

「シドー……?」

 私の声に、こたえる声はない。シドーは、もう其処そこにはいない。シドーはもう、神により消滅させられた。そう、自覚じかくした。してしまった。

 その瞬間、私の心はぐしゃりと音を立ててへしれた。

「ひ、いや……いやだよ、シドー…………こんなの、嫌…………」

 ぺたんと、力が抜けてその場にくずれ落ちる。止め処なく流れ落ちる涙、悲しみが滂沱の涙となって次々と流れ落ちる。

 かなしい、悲しい、悲しい。悲しさがこみ上げてきて、止め処なく押し寄せる。

 心が、へし折れたこころが止め処なく押し寄せる悲しみによって更に悲鳴ひめいを上げて。

「嫌ああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼‼‼」

 神域しんいきに、私の悲鳴が木霊こだました。

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