第7話 らいかんさん虫糞茶を薦める。

「えっと…乗るって?」

アナリーさんは目をまん丸くしています。


「あ。そうですね。びっくりしますよね。実は少し遠出になるのですよ。」

「そうじゃなくて?」

「え?」

「え?」


ごめんなさいね。あなたの足に合わせると今日中に帰ってこれないの。

って直接言えない私。小心者。


「試しに乗ってみてください。風を切りますぜ?お客さんですよ。」

「あ…。はい。」


アナリーさんはしぶしぶなのかしら。私の上に乗ってくれます。


「しっかり使っていてくださいね。首のたてがみなら掴んで大丈夫ですから。行きますよお~。」

「え?ええ。ちょっと…ちょっとおおおおおおおお!!!」


時速60kmの自慢の足をご堪能くださいませ。


「どうです?早いでしょ!このスピードなら夕方までに帰ってこれますから。」

「あばばばばばばばば」


「森の手前に村があるのでそこで休憩しますよ。」

「あばばばばばばばば」


「それまでノンスト~~プ!」

「あばばばばばばばば」


 ◇


「到着です~♪」

「あば・・・」


「アナリーさあああん。村につきましたよ~。お茶しましょう。」

「あばばば・・・」


「ご…ごめんなさい。らいかんさん。気持ちが…悪くて。」

「あらいけませんね。乗り物酔いかしら?」


「自分で乗り物って言っちゃった…。うおぷ。」


「これどうぞ。サンピンの根をすり潰したお薬です。酔いにいいのですよ。」

「あ…常備してるのね。乗り物酔いの薬。」


「半分くらいの方は私に酔いますからね。」

「言い方…。」


「ありがとう。楽になったわ。」


 ◇

この村には美味しい果実のジュースと独特のお茶があるお店がお気に入りです。

お茶は少し苦いけど気力回復にいいので、そちらを飲んでもらいアナリーさんが回復するのを待ちましょう。


「あれ。このお茶苦いけどいけるわね。」

虫糞茶ちゅうふんちゃというお茶ね。」

「糞?」

「蛾の幼虫の「んこ」を乾燥させた高級茶よ。」

「おろろろろろ。」

「汚くないですよ!お腹に優しい高級茶です。これ飲んで気力を回復させてくれないと、これ以上前に進みませんよ?飲んでください!」


こんなに人間の知恵と工夫で考えられた良いお茶なのに、吐くなんてらいかん許しませんよ!!


「ふぁい・・・。」

アナリーさんは、泣きながら飲んでくれました。

最後に涙を貯めた目で、「味は嫌いではないわ。」と言ってくれました。


気に入ってくれたようで良かったです。

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