第31話 神様からのSOS(2)


私は音の正体を確認した途端、気持ち悪さに思わず悲鳴を上げそうになった。


目の前に現れたのは、数え切れない程沢山の

赤や黒や色とりどりの大きな蜥蜴、カメレオン、イグアナ、ヘビ。


それらが目の前にいる。私はMaxで気持ち悪くなり、此処はガラパゴス島かと突っ込みたくなる。


神社にいる生き物は普通なら神の使いだが、今目の前にいるのはそんなものではない。

人の感情が生んだ邪の存在だ。


颯さんはすぐ結界を張った。これだけの数が相手だと、どこから攻撃を仕掛けてくるか分からないし、どんな攻撃を仕掛けるか分からないからだ。


「明日香。笛の力を借りて空中にいろ。」

私はすかさず”青狼の笛”を奏でた。刹那、ゴォッ!という風の音と共に私の身体は空中に浮いた。


「颯さんの身体も上げます!」私は声を掛けたが、

「このままでいい。」と言って結界を張っただけでその場に佇んでいた。何か考えがあっての事だと思うが、私は気が気ではない。


爬虫類は大挙して結界の周りに押し寄せ、眼光鋭くチロチロと舌を出しながら颯さんに狙いを定めていた。この中には毒を持つ種類が相当数含まれている。噛むか吐くかの攻撃だろうと予想は出来た。


「明日香、鎮静効果のある曲を頼む。」

そう言いつつ、倶利伽羅剣に炎を纏わせた。


颯さんの要求に応える何かいい曲ないかな・・・と考え、

そうだ!と思いついたのは全世界で愛されているアイルランドの歌姫の曲だ。


どうか、良い方向にいきますように!と願いBGM程度に奏で始める。

”Time”、”Child”、”Blue”、”Flow”など、誰もが一度は聞いたことがある癒しの名曲。



**


余談だが、2ケ月ほど前、結芽と動画に投稿したのもこれ。

再生回数が爆上がりらしく、今は1000万回再生らしい。この調子だと、もっといく。

有難い事である。


**



颯さんはまた真言を唱え始めた。すると、更に沢山の爬虫類が姿を見せた。

一体どれだけいるんだろう・・・。颯さんの周りにはもはや隙間が無い。


一番近くに居る蜥蜴達が、何とか結果を破ろうと噛みついている。強固に張られている結界は

破れはしないが、”シャー!”という威嚇のような声が聞こえ、狂ったように噛みついていた。

何の作戦も立てず、本能のまま攻撃している。そんな感じだ。


そして驚いたのは、爬虫類同士で喧嘩をしたり何かエサは有るかと徘徊していたり、てんでんばらばらの行動をしていた。


(何だろうこれは・・・)私は違和感を持った。

今まで戦ってきた魔物はそれなりに知性が有ったように思うが、此処に居る魔物は知性は無いように思えたのだ。



そんな事を思いつつも精一杯吹いた。

颯さんの唱える真言と私の笛が重なって不思議な一体感が生まれた。その時、神社を取り巻くように生えている大きな木々が風も無いのにざわざわと音を立て揺れ始めた。


ざわざわ、さぁっと云う風の音が聞こえ、神社の中の空気が天に向かって抜けていくような感覚がしたのだ。


すると、ばらばらの行動をとっていた爬虫類が少しづつおとなしくなり、段々静かになっていった。

仕舞いには眠ってしまったのか動かなくなった。

無数の爬虫類が神社の境内で眠っている姿は異様だ。勿論一般的には見えないが。


颯さんは炎を纏わせた俱利伽羅剣を眠っている爬虫類に向け、炎を放った。言ってみれば火炎放射器のような感じだ。そして一気に浄化されていく様は何とも言いようのないものだった。


木々はまだ、ざわざわ、さぁさぁ、ギイギイと音が鳴っている。

颯さんは天に向かい一心不乱に真言を唱えた。優しく滑らかに厳かに、ひたすら唱えた。

唱えた回数は108回。人間の煩悩の数とされる数字だ。


108回唱え終わったところで、颯さんの頭上に一瞬ぱあっと明るい光が差し、その光は上空10m位のところまで移動した後暗闇が戻り、境内に静寂が戻った


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

あと書き(というかこぼれ話)

昨日、自宅で愛犬の悪戯を止めようとして段差から落下。目から星が出ました。星って、夜空以外にも出るんだと呑気に思った私でした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る