第5話

 一線を越えたというのに、翌朝の彼女は何もなかったかのように「おはよう」と言い、私も「おはよう」と言う。

 これで良い。これが良い。


 二日目のパークも存分に楽しむ。今日はショー目当てだ。時間を考慮し合間にアトラクションを楽しむ。お化け屋敷では暗くなった瞬間にキスをされた。周りを見ればカップルばかりだった。

 やっぱり、別れた彼氏の代わりという位置付けなのだろうか。

 少し暗くなった空を眺め切なさが込み上げてきた。夢の時間がもうすぐ終わってしまう。



「楽しかったね」

 お土産を抱えた彼女は笑顔だ。

「終わっちゃったね」

 私は笑えず、振り返った。

「何言ってるの、家へ帰るまでがデートだからね、送ってくれるよね」

「もちろん」

 無事に送り届けるつもりだ。


「話があるから、入って」

 送り届けるだけで帰ろうと思ったら、そう言われた。話というのは昨夜の事だろう。時間ももう遅いし、入ってしまったら今夜帰るのは難しくなりそうだなと逡巡する。

「明日は3限からだよね?」

 私の考えはお見通しだったらしい。

「うん、そうだね」

 覚悟を決めるしかなさそうだ。

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