第3話

 人気の遊園地なので、たくさんの人で賑わっていた。

 その地に一歩踏み込めば、現実を忘れてまるで夢の中にいるような場所だから。

 彼女と一緒に来るはずだった男のことは話題にすらせず、彼女の笑顔を独り占めにする。

 並んで遊んで笑って食べて、そして笑う。

 失恋を思い出させないように、彼女がずっと笑っていられるようにするのが私の役目だ。と言いながら、私が楽しんでいるだけなのかもしれないが。

 一時的にでもフリーの状態の彼女と一緒にここへ来られたことで、浮足立っていた。ここの中でだけは恋人の気持ちで接していた――現実ではない場所だからと言い聞かせて。

 そんな思いを巡らせて、隣に佇む彼女を見れば不思議そうに私を見ていた。

 そして「面白い顔してたよ」と笑われた。



「楽しかったねぇ」

「明日も目一杯遊ぼうね」

 閉園まで遊び尽くして、併設されているホテルへチェックインした。

「なんか豪華じゃない?」

「リゾート地だからこんなもんじゃない」

 お部屋は広くて綺麗だし、アメニティも可愛い。

「あっ」

 そして、ダブルベットだった。

「大きいね」

 ふかふかだよぉと座ってぴょんぴょんしている。彼女は別に気にしていないのだろう、女友達とベッドを共にすることなんて。

 私も平静を装って身支度を整える。

 交代でシャワーを浴びてベッドに入る。

 明日も朝から遊ぶために、お喋りもそこそこに眠りにつく、はずだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る