心の砦

 誰も降りない無人駅に売店がある。

 自販機もないその駅で売っているのは、おばあさん手作りの甘酒だけだ。

 何となく一杯貰う。甘さが心に染みて涙が溢れた。

「あの崖に行くのは今度にしなさい」

 その言葉に後押しされてホームへ戻る。

「またいつでもおいで」

 その笑顔で、もう少し生きられそうな気がした。

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