第8話 怠惰卿、穢血に寵愛を授ける。

 黒レンガの館。

 その目の前で、穢れた血がその醜さを余す事なく外気にさらしていた。

 人間とは思えない、獣毛の皮膚。

 二十数人の穢血の男は、一人の美少年に観察されている。


 冷たい青の瞳に映るのは、人間でもないのに怯える獣人たちの目。

 金の長髪は艶と揺れて、獣人どもの汚らしさを強調するよう。


「キミら、それ全裸換算で良いの?」


 そんな目で見る訳ないじゃん。俺だよ?

 ニュート・ホルン・マクスウェルです。

 いや、気になってさ。


「全裸なら服着てもらわないといけないんだけど、それであったかいんだったら毛少ない奴に服まわしたくてさ……」

「ばうわう! ばうわう!」

「ふしゃー!!」

「ぴょんぴょん!」

「うさ耳ちゃん。兎の鳴き声ってそれで大丈夫なのかい?」


 うっうーん、意思疎通って難しい。

 どうしようね、これ。

 いや、どうにも俺が計算を間違ったらしくて、ウルマース、奴隷商に金を渡しすぎちゃったんだけどさ。

 そのおつりで穀物とか服いっぱいくれたんだよね。

 全部略奪品っぽい気配するけど、冬物っぽくあったかそうなの。

 とりあえず、そいつをあんま良い服着てなかったケモミミ共に着せようとしてんだけど……。


「……警戒されてんなぁ」

「当然です。殿下、穢れた血など……」

「純粋に国が違えば言葉通じなかったりするからなぁ」


 盗賊たちに聞くと、彼らは十五年前の戦争でこっち側に入り込んで、それ以来隠れて増えたり密入国して増えたりして、めっちゃ居ついてたらしい。

 つまり元は外国人なのだ。外国獣人?

 それを盗賊とかが捕まえて、ウルマースに売って、おーういぇーしてた訳ね。

 街は廃墟だったが、隠れ住んでる奴はいっぱい居るって事だろう。

 未来は明るい。

 俺の仕事は多い。


「寝る……」

「ちょっと殿下! 責任は! 責任はおとりください!」


 めんどくさい……。

 俺って駄目な奴だな。金魚すくいで金魚ゲットしても母ちゃんに世話丸投げするタイプだよ。母ちゃん早死にしたし金魚すくいとか行ったことないけど。

 ……腹減るまで放置すれば、メシ目的で来るかなぁ。


「「「さ、さま。貴族さま!」」」

「んぁ?」


 全部バケツ頭に押し付けて寝ようとしたら、ちっちゃいのが三匹出てくる。

 うさ耳白いケモミミ娘。

 イヌ耳黒いケモミミ娘。

 ネコ耳赤いケモミミ娘。

 全部ロリ。

 いや、十五歳の人間がロリって言うと犯罪臭がするな、せっかくの美貌が損なわれる。十歳になってないくらいの可愛い子たちと呼ぼう。

 総じて、他の獣人に比べるとケモ要素が薄い。

 これでケモナー向けって言ったらキレられるだろうケモ具合。


「「「わたしたちはどうなってもいいので! みんなをおたすけください!」」」


 声揃えて言ってるよ。可愛い。

 一人だとぷるぷる震えちゃって喋れないんだね。支え合ってる。かーわいい。俺が前世で泣いてる時もこんな友達が居ればよかったのに。

 過去思い出した。死ぬ。


「ばぶばぶ……」

「で、殿下! お気を確かに!」

「俺の背中に隠れて言う台詞ではないよね?」


 バケツ頭よ、鎧かっこいいんだから俺の前に出ろよ。

 なんだ、ケモミミ怖いのか。アレルギーか? そっちだったらごめん、パパに土下座してでも帰らせるから。

 さておき。


「……今、なんでもって言ったよね?」

「「「ひゃぅぅ……」」」


 正確には言ってないが同じ意味だ。ヨシ。


「よぉし、他の連中は好きにしろ。この子は俺が責任をもってぐへへする」

「殿下ぁ!?」

「おぉ、ニュート様はいかれてんなぁ」


 獣人の群れがどよめく。

 そりゃそうだ。急に可愛い幼女3人の肩掴んでぐへへ宣言したんだから。

 俺だったら俺を射殺してる。

 だがね、もう良い。

 説得なんて努力をするつもりは、自己犠牲だろうがケモミミを手に入れてやる!


「さ、行こうか……」

「「「どーなどーなどーなー」」」


 こっちの世界にもその歌あるんだ。権利問題大丈夫?

 めっちゃ獣人に睨まれてる。危ないかも。

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