メリーさんと超能力者な僕と

kuro

ファンタジー世界編

プロローグ

 えていた。全てが燃えていた。街も、大地も、海も、空も、全てが燃えていた。

 世界せかいが燃えていた。この世界はもう駄目だめだ、そう思えるくらいに世界を炎が焼き尽くしていた。一面の全てが火のうみだ。

 そんな中、一人の少年こどもが居た。少年の前には、一人の女性おんなが立っている。いや、この女性を一人と形容けいようして良いものか?女性は少なくとも人ではなかった。女性は異形いぎょうの姿をしていた。

 とはいえ、人とかけ離れた姿すがたをしている訳ではない。その背から一対の翼を生やし白い羽衣を身にまとっている。純白のドレスと相まって、とても神々しい。

 女性は少年に言う、力がしいかと。少年はそれに何と答えたのか?少なくとも、少年が何もかんがえていない事はあるまい。この状況下で、それだけはありえない。

 少年は何を答えたのか、ドレスの女性は少年の言葉にどうこたえたのか。

 ・・・ ・・・ ・・・

 ぷるるるるっ……ぷるるるるっ……

 電話がる音が、部屋に響いた。僕こと新藤大和しんどうやまとはスマホを手に取り、画面のパネルに軽く触れる。相手は非通知ひつうちだった。

「はい、もしもし。どなたですか?」

「もしもし、私メリー……今公園前のゴミて場に居るの」

 ああ、なるほど?これは都市伝説でよくあるメリーさんの人形という奴か。僕は理解すると電話相手に比較的明るい口調くちょうで返した。

「オッケー、じゃあ準備してってる」

「え?あ、はい……」

 電話が切れた。さて、こうしている間にも準備をすすめるとしますか。

 お菓子とジュースを用意して、丸テーブルの上にならべる。そして、それだけじゃ芸が無いので軽い食べ物を作る事にした。フライパンは何処どこだっけ?

 ぷるるるる……ぷるるる……

「はい、もしもし」

「私メリー、今駅前広場に居るの」

「うん、今準備を進めている所。もう少しゆっくり来てもいよ」

「え、えぇ……」

 念の為、軽く掃除は済ませておこう。部屋の中を綺麗に整頓せいとんして、二人分のお皿にさきほど作った軽食けいしょくを乗せて……

 そうしている間に、再び電話のコール音がした。

「はい、もしもし♪」

貴方あなた、少したのしんでないかしら?今、交番前広場の前」

 電話が切れた。そうだ、身体をあらっておかないと。そう思い、身体をシャワーで軽く洗い流す。

 そして、風呂場から上がり衣服いふくを着替えた直後。再びコール音が。

「はい、もしもし」

「今、貴方の家のまえに居るの」

「オッケー、じゃあ僕は部屋の中で待ってるから好きにがってきなよ」

「…………」

 もう何も言わず、電話はれた。そして、部屋へやの中でスタンバイしておく。

 やがて、もう一度コール音が……

「はい、もしもし」

「……私、メリー。今貴方の後ろに―――」

「はい、今僕は君の後ろに立っているよ?こんにちわ」

「……へ?」

 包丁ほうちょうを持って立っているメリーさんの人形にんぎょう(僕より少し小さいサイズ)。

 そんな彼女を、背後からそっとつつみ込むようにき締める。びくっと一瞬身体を震わせたメリーさんはぎぎぎっと音がしそうな緩慢かんまんな動作で僕へと振り返る。其処にはにっこりと笑顔を向ける僕の姿が。

 ひっと引きった表情をしたメリーさん。その直後ちょくご……

「きゃあああああああああああああああああああああっ‼‼‼」

 きぬを引き裂いたような悲鳴が、部屋中にひびき渡った。

 あ、ごめん。抱き付いた時にむねに手が触れてたわ。それで悲鳴ひめいを上げたのかな?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る