第2話 カエルの母もカエル

 小説を書き始めたのは確か9歳ぐらいのころだったと思う。


 こっそりと小さな手帳に書いていた小説をある日父に見つかった。

 彼はひどく汚いものを持つようにその手帳を親指と人差し指でつまみ上げ、パラパラとめくりながらしばらく眺めて、「こんなもの書いてる暇があったら勉強しろ」と言った。


 あれから何年たっただろう。

 学校を卒業し、就職し、結婚し、私はオカンになった。

 小説を書いていたこともすっかり忘れていた。


 息子と娘は小説を書き始めた。

 息子の小説は難解で、娘の小説は思春期を煮詰めたみたいだ。

 モスキート音のような小説。その青さはいずれ喪われるから書きたいだけ書いたらいい。


 ある日、彼らは「小説書いて投稿できるサイトがあんねんで、おかあやんも書いたらええんちゃう」と言った。

 そんな私が一番得意なジャンルは業務連絡と社内会議の議事録です。「筆圧が強いね・・・」と褒めていただいております。


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